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コラム
2004/05/28 00:00 更新

ITソリューションフロンティア:システム
大規模共同利用型証券システムの移行プロジェクト(前編)

2003年5月に総合証券バックオフィスシステム「THE STAR」が本格稼動を開始した。全面的なシステム再構築と併行して、各証券会社の利用者への説明・研修も進められた。移行後の業務がスムーズに行われるためには、利用現場のシステムに対する信頼が前提となる。本稿では、日本最大級の共同利用型システムの移行プロジェクトの実際と成功のポイントを紹介する。

STP時代の新システム「THE STAR」

 証券共同システムとして1966年にサービスを開始したSTARシステムは、野村総合研究所(以下、NRI)の証券業務の経験とノウハウを凝縮したシステムとして、金融マーケットの発展とともに成長してきた。STARシステムはその後の度重なるバージョンアップを経て、2003年5月にTHE STARシステムとして本格稼動を始めた(図1参照)。THE STARは、来るべきSTP(約定〜決済の全電子処理)時代を先取りし、さまざまな先進的技術を投入して豊富な機能を備えた統合証券バックオフィスシステムである。

図1

 THE STARには、次のようなシステム構造の大変革と先進的な工夫がなされている。

(1)T+1(約定日翌日決済)およびSTPを実現するため、基幹業務システムをバッチ処理からリアル処理に変更している。

(2)メンテナンスの容易さ、運用コスト削減のため、目的別サーバーによる分散システムとなっている。

(3)画面を見やすくし、誤操作を防止するためユーザーインタフェースを大幅に改善している。

(4)リスクマネジメントの観点からフロントコンプライアンスを実現している。

(5)今後の拡張性を確保するためWeb基盤を導入している。

 またTHE STARは、STPに対応して証券業務のBPR(業務プロセス再構築)を実現することが可能なシステムとなっている。そのため、システム切り替え作業に先行して行われた業務移行プロジェクトでは、各証券会社の利用者の協力により、システムの利用効果を高めるための業務上の工夫が数多く行われている。

システム移行の実際

 システム移行プロジェクトは、以下のように大きく3つの段階に分けて行われた(図2参照)。

図2

(クリックで拡大表示)

(1)業務プロセス再検討のためユーザーワーキング

(2)端末・システム基盤の切り替えおよび注文システム、会計システムの先行リリース(フェーズ1)

(3)新業務の全面稼動(フェーズ2)

 ユーザーワーキングと、その後のフェーズ1、フェーズ2における研修は、20数社に達する利用会社を業務内容に応じて3つのグループに分けて実施された。また、モデルユーザーによるモデル店を先行させたが、これはシステム稼動の信頼性を高めるばかりでなく、検討や研修の効果を高めるためにも非常に有効であった。

(1)ユーザーワーキング

 THE STARは来るべきSTP時代に対応したシステムであり、各証券会社は、それぞれの業務レベルに応じてシステム稼動レベルを選択できるようになっている。このため、どのような業務レベルをシステムによって実現するかを事前に十分に検討する必要があった。そこで2001年8月よりユーザーワーキングを始めた。

 検討のベースとなる業務コンセプトおよびシステムコンセプトは、NRIが経験とノウハウに基づいて提案する標準業務システムである。これによって、手作業が介在している業務プロセスを全面的に再構築し、バックオフィスのコスト削減を図るとともに、金融プロダクトの拡大などのサービスの飛躍的な向上と、T+1に向けたSTPおよびリスクマネジメントを実現できるようになる。この標準業務システムに基づき、どのような業務とシステムが必要かについてモデルユーザーと検討を重ねた。

 それを基に全社向けのユーザーワーキングを開催して、事務処理をどのように分担するか、支店総務人員をどこまでスリム化できるか、支店総務と管理本部でコンプライアンス(法令順守)チェックをどのように分担するかなど、役割分担と業務範囲を明確にし、業務要件を確定することができた。このようなユーザーワーキングにより、業務の形態とシステムでの実現範囲が明確となり、それを基に、フェーズ2で実現する業務機能が各証券会社ごとに決定されたのである。

後編へ)

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[田巻仁志、岩田光代,野村総合研究所]

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