コラム
» 2008年11月06日 09時57分 UPDATE

ミニノートPC向けOSとしてのWindowsの将来は?

Microsoftには、Windows 7をミニノートPCで動かす以外の選択肢はない。Netbookは、今一番勢いのあるコンピュータのカテゴリーなのだから。

[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 現時点で評価するのは時期尚早だが、Windows 7がどう仕上がるかは見ものだ。

 米Microsoftは先週、Netbookのこれまでのイメージを打ち破るデモを披露したが、2つの現実は変わらない。それは、アナリストがミニノートPCと呼ぶこの分野でLinuxが強いこと。そして、この低価格で非力なミニノートPCの中でWindows Vista搭載機は皆無に近いことだ。しかし、Windows 7ではどうなるのか。

 再三強調してきたように、ビジネスではイメージがすべてだ。Microsoftが先週開催したProfessional Developers Conference(PDC)でスティーブン・シノフスキー氏は、今最もホットなこのカテゴリーのノートPCを片手に掲げて、そのイメージを鮮やかに一新するプレゼンテーションを行った。「非常に小型のNetbook。わたしはこれをWindows 7で使っている」

 Windowsエンジニアリング担当の上級副社長を務める同氏はこう続けた。

「このマシンは1GHzプロセッサと1GバイトRAMを搭載し、Windows 7が動いている。このOSの現在のビルドでは、ブート後はRAMの約半分が使える。われわれはこうした利用を想定したWindows 7の開発を引き続き進めていく。パフォーマンス面ではこれまでの成果に大いに自信を持っている。わたしはこのクラスのマシンに、そして、こうしたマシンでWindows 7が使えるようにわれわれが貢献できることにわくわくしている」

 聴衆は拍手喝さいし、この1週間というものブロガーやメディアの記者は、Windows 7がNetbookで動くことを記事に取り上げている。誰もがハッピーだ。WindowsがまたどんなPCでも使えるようになる。NASAが宇宙飛行士を再び月に送り込む計画の目標時期を約8年後に前倒しするようなサプライズというわけだ。

 マーケティング戦術として見ると、シノフスキー氏がNetbookを絶賛したのはお見事だった。同氏ならソフトウェア開発にうんざりしても、販売とマーケティング部門でやっていけそうだ。シノフスキー氏はNetbookとWindowsに対するイメージを塗り替えた。お手柄と言える。しかし、MicrosoftがWindows Vistaに対する酷評から思い知らされたように、イメージは必ずしも現実と一致しない。Windows 7、Vista、Netbookに対するこうしたイメージは、いずれも現実とずれている。

 Windows Vistaは新しいNetbook、とりわけIntel Atomプロセッサ搭載機ではそこそこ快適に動く。一部のモデルはVistaを搭載して出荷されており、メモリの使用量もWindows 7のプレβとそれほど変わらないだろう。だが、もっと重要なのは、MicrosoftがWindows 7で全般的にパフォーマンスの改善を施したことだ。コレステロールでドロドロの血液がサラサラになったとでも言えるだろうか。

 「Windows 7はわたしのMSI WindNetbookで、Vistaより間違いなく速く動作している」とケビン・トフェル氏は11月3日付のブログで述べた。「しかもそれは、Vistaをインストールする前に増設した1GバイトRAMを外した後でのことだ。先週書いたように、このテストビルドは『スリムで効率的』だ。だが、このことはあまり強調したくない。これはまだテストビルドにすぎないのだから」

 わたしも同氏の意見に大賛成だ。新奇な機能を有効にした場合に、Windows 7の動作がどうなるかは要注目だ。だがもちろん、Windows 7はNetbookで動くに違いない。Microsoftには、それを実現する以外の選択肢はない。Netbookは、今一番勢いのあるコンピュータのカテゴリーだ。景気の低迷に伴い、Netbook需要は増加の一途をたどるとわたしは予想している。

Netbook:今年の出荷台数は1088万台の見通し

 IDCによると、今年第1〜3四半期のミニノートPCの出荷台数は650万台に達した。同社は今年の通年の出荷台数が昨年の18万1000台から1088万台に伸びると予測している。IDCとそのライバルのGartnerは、いずれもNetbookをミニノートPCと呼んでいる。そうすることをスティーブンにも勧めたい。「book」の前の「Net」にまつわる事柄は、Microsoftにとってプラスになるものではないからだ。初期のNetbookは、GmailやGoogle DocsのようなWebアプリケーションに適していた。プロセッサの処理能力が低く、システムメモリとSSD(ソリッドステートドライブ)の容量も小さかったからだ。

Netbookの世界出荷台数シェア(2008年第1〜3四半期)
メーカー シェア(%)
ASUS 45.5
Acer 22.8
OLPC 5.7
MSI 4.9
HP 4.6
Intel 3.6
Dell 2
その他 10.8
(資料:IDC)

 Netbookの売り物は、パフォーマンスの良さ、小さなサイズ、低価格だ。景気への懸念を背景に500ドル未満のノートPCへの関心が高まる中、少なくとも北米では、こうした特徴を併せ持つNetbookはうってつけの製品だ。10月中旬にGartnerは第3四半期のPC出荷動向調査の速報値を発表し、前回の発表に続いてNetbookを特に取り上げて説明を加えた。このセグメントでの好調に支えられ、AcerとASUSはPC出荷台数を伸ばし、EMEA(欧州、中東、アフリカ)でAcerはHPを抜いて首位に立った。世界全体でも、AcerのPC出荷台数の伸び率は前年同期比47%増とHPの3倍以上に達した。米国では、NetbookはノートPCの全出荷台数の約5%を占め、出荷台数の前年同期比伸び率を2ポイント押し上げた。

 低所得層の購入者の一部がノートPCの代わりにスマートフォンを選択する背景にある経済状況は、Netbookの購入動向にも影響を与えるだろう。この影響により、特に300ドル未満のNetbookが大量に売れるというのがわたしの予測だ。現在、400ドル未満の価格帯では、LinuxがWindows XP Homeとともに強みを発揮している。

 欧州では奇妙にも、AcerのPC出荷の好調と通信業界の端末販売競争が密接に結び付いている。IDCによると、第1〜3四半期に出荷されたNetbook全体のうち60%は欧州向けだった。通信会社の契約とセットで販売されたものがその半数を占める。こうしたNetbookは、通信会社が販売奨励金を出して価格の一部を負担しており、サービス契約への加入を条件として販売されている。

 わたしは3日の夕方に、「スマートフォンがWindows PCの市場を奪う」という自説をIDCのアナリスト、デビッド・ダウード氏にぶつけてみた。同氏は、Netbookは、今後本格化するスマートフォンとの競争を踏まえ、PC業界が打ち出している対抗策の一環だと考えている。PC業界には、「スマートフォンは、人々が一般にPCで行っているデータ作業のほとんどに対応でき、常時インターネット接続と安価な端末価格もほぼ完全に実現されている」という危機感があるという。

 「厳しい経済情勢を受け、PC業界は対応策として安価なミニノートPCを提供している。需要を刺激するためだけではない。iPhoneのようなデバイスに市場を奪われるのを防ぐ狙いもある」とデビッドは説明した。

LinuxとNetbookの親和性

 一方、ミニノートPCは、Linuxに本格的に触れる機会をメインストリームのユーザーにもたらした初のPCカテゴリーでもある。Linuxは、デスクトップPCやノートPCで使われるケースは非常に限られている。だがNetbookでは、このオープンソースOSを搭載したモデルの出荷台数は膨大に上る。

 プレストン・グララ氏は、Netbook向けOS市場でWindows 7がLinuxに壊滅的な打撃を与えるだろうと力説している。同氏は、NetbookがWindows Vistaに壊滅的な打撃を与えたことも書くべきだっただろう。これまでのところ、Vistaを搭載して出荷されたNetbookはごく少数だからだ(IDCによると1.5%)。グララ氏は7月時点のデータから、Windowsの搭載シェアが大きいことを示すために、Linuxを搭載して出荷されたNetbookは全体の約20%だったと指摘した。

NetbookOSの搭載シェア(2008年第1〜3四半期)
OS シェア(%)
Windows XP 74
Linux 24.5
Windows Vista 1.5
(資料:IDC)

 しかし、20%という数字は、サーバ向け以外の分野でのLinuxのシェアとしては極めて大きなものであり、メインストリーム市場ではまったく前例がない。グララ氏のデータが正しいとすれば、Linuxのシェアは伸びていることになる。IDCによると、第1〜3四半期に出荷されたNetbookのうち、Linux搭載機は24.5%を占めた。これは驚異的な数字だ。MicrosoftがVistaの後継製品をリリースするまでの何カ月もの間に膨大なNetbookが販売されていくことを考えると、Windows 7がLinuxに壊滅的な打撃を与えるという見通しを、同氏やほかの誰かがどうやって合理的に主張できるのか、わたしには理解できない。

 Microsoftが何らかの譲歩をしない限り、Windows 7のNetbookへの普及には障害がある。それはライセンス条件だ。大部分のNetbookの価格が300ドルを優に下回るとすれば(通信会社の販売奨励金なしで)、Windows 7のコストは多くのNetbookメーカーにとって過大な負担になる。ライセンス条件は、VistaがNetbookのOSとしてはほとんど人気がないもう1つの理由でもある。前述したように、多くの新モデルではVistaが十分に動作する。しかし、Vistaは非力な低価格ノートPCに採用するには、LinuxやWindows XP Homeと比べてライセンスコストが法外に高い。

 しかし、注意すべき点もある。ミニノートPCの定義だ。画面サイズは7〜8.9インチから10.2インチへと拡大してきている。さらに、今や一部のメーカーは12インチや14インチモデルの構想を話している。主な使い道がWebアプリケーションの利用なら、そうしたモデルもNetbookの枠の中に収まるだろう。だが、どうして14インチのノートPCがミニノートPCなのか。何と比べて「ミニ」なのか。画面サイズが大きくなり、それに伴ってマシンパワーや価格も上がれば、Windows 7が採用しやすくなるのは確かだ。しかし、13インチや14インチのディスプレイを備えるポータブルPCは、ミニノートPCとは言えないだろう。

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