新聞広告より効果アリ!? “mixiで求人”してみました

若い世代を中心に急速に広がるSNS。求人者が集まるコミュニティに参加すれば、お金をかけずにアルバイトなどを探すことができる。はたして新聞広告よりも効果はあるのか――。

» 2006年07月21日 19時03分 公開
[村元正剛,ITmedia]

 人材不足の昨今、即戦力となるスタッフの求人にはそれなりの費用と時間がかかる。この経費を低減するためにSNSを利用する企業が増えているようだ。SNSには、同じ趣味・嗜好のメンバーたちがクローズドの状態で情報を交換できるコミュニティというものが存在する。その中には、求職中の学生や、転職志願者、フリーターなどが集うコミュニティも存在する。

 会員数が400万人を超える日本最大のSNS「mixi」の場合、「mixiハローワーク」というコミュニティがある。参加メンバーは約9000人にも達する。主に、就職活動中の若者やアルバイトを探している大学生などが登録しているようだ。筆者は考えた、「ここで求人を呼びかけると採用費用はゼロになるのではないか」と。

 例えば、新製品の使用感をリサーチするためのモニターを探しているとしよう。まずは、コミュニティに参加をして「モニター急募」などのトピックを立てる。どんな人を求めているか、勤務地、勤務日など最低限の情報だけを告知し、興味を持った人からメッセージを送ってもらうようにする。報酬など詳しいことは、問い合わせてきた人に個別に回答することができる。「mixi」はアクティブユーザーが多いので、反応も早いのも利点だ。

「mixiハローワーク」にトピックを立てて見よう

 実は、この「mixiハローワーク」を利用した求人を、筆者も実践したことがある。筆者は小規模な編集プロダクションを経営しており、通常は新聞の求人広告を利用している。首都圏版に2日間掲載するだけで10万円以上になるから、費用はバカにならない。ネット上の求人サイトでも数十万円の経費が必要となる場合が少なくない。また、好景気の煽りで求職者は減少傾向にあり、いくら求人しても希望する人材に出会えないこともある。これは筆者だけでなく、同業他社からも同じような不満を聞くことが増えているのだ。

 新聞に求人広告を出すのと同タイミングで「mixiハローワーク」にトピックを立てると、新聞を見た人よりも遙かに多い人から問い合わせのメッセージが届いた。メッセージから応募者のプロフィール、日記、参加コミュニティなどをチェックして、年齢や居住地、興味のあることなど、面接に呼ぶ前にある程度の人物像を推し量ることができるのもSNSのメリットだ。

GREEでの反応はいまひとつだった

 通常の採用方式で面接する場合、多くの人はマニュアル通りの受け答えをする。人事のプロならともなく、応募者の“素”の部分を見抜くのはなかなか難しい。mixiでは、日記やコミュニティでフランクな文体で書き込みをしている人が多いので、その人の性格もかいま見ることもできる。トピックを立てている間は、私のページに“あしあと”を残す人も急増したので、求職者側も私の人となりをチェックしにきていたのだろう。条件を確認しあった上で、履歴書を送らせられるので、受験者を絞り込み、採用活用に要する時間も節約できる。ちなみに、ほかのSNSということで「GREE」でも同様のトピックを立てたのだが、こちらの反応はいまひとつだった。

 さて、その結果だが――。採用したい人は1名のみだったため、あらかじめ5名まで絞り込み、面接・作文試験を行った。mixiからの応募も、新聞の場合と同じように履歴書が複数名から届いたが、実際に面接したのは1名。mixiルートは、事前に素性がわかるために先入観が芽生えてしまうのが欠点といえば欠点だと感じた。会ってみたいと思う人が絞り込まれてしまったのだ。

 新聞ルートは履歴書に記載された情報しかないため、より多くの人に会いたくなる。実際に採用したのは新聞ルートの応募者。これは純粋に面接での受け応えと、作文の成績によって決めたもだが、mixiルートの応募者とは事前にメッセージの交換をしていたため、面接での応募者の対応が「ちょっとフランクすぎるかなぁ」という印象を受けたことは否めない。されど、もう1人採用する余裕があれば採りたかったと思える人材ではあった。次にスタッフを増員する際も「mixiハローワーク」は活用したいと考えている。

アルバイトや専門職を探すにはうってつけ

 ただし、クローズドのコミュニティとはいえSNS参加者の多くはプライバシーを明かしているわけではない。本名を隠している場合がほとんどだし、年齢や職業を偽っているケースもある。会社で長く働いてほしい正社員をじっくり探す方法としては、必ずしも有効とはいえないが、小規模なアルバイトやパートタイマーを採用するための補助ツールとして活用するべきだろう。優秀な技術を持つ専門職にとっても、mixiがアピールの場になるのではないか。

 ある特定の属性の人にアンケート調査を行う必要が生じたことがある。友人・知人ルートだけでは締め切りまでにサンプル数を揃えることができず、mixiを活用した。その属性に該当する「マイミク(mixi内での友人)」に呼びかけるだけで、あっという間に協力者が集まった。こうした利用法も有効だろう。

 専門的なことを低予算で外注したいときにも利用できそうだ。筆者が注目しているのがカメラマン、Webデザイナー、プログラマーといったコミュニティ。地方に住み、活躍の場を広げたいと考えている若い世代も参加しているので、「自社ホームページをリニューアルしたい」といったときに力を貸してくれる人材も見つかりそうだ。逆にmixi経由で筆者のブログを見に来て、文筆業であることを知り、仕事の相談を持ちかけられるということもあった。SNSの「人材検索サイト」としての利用価値は今後も高まるのではないだろうか。

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