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» 2006年11月06日 12時30分 UPDATE

シゴトハック研究所:前倒し仕事術(2)──「五条大橋の戦い」に学ぶ

やっつけたい仕事を「橋」に誘い込んで、“一対一の戦い”に持ち込む。これを意識することで、「前倒し」を普段から実践し、さらには習慣化できるようになります。

[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題:「前倒し仕事術」を習慣化するには?


コツ:自分にとって有利な状況に持ち込む

 【問題編】でも触れた通り、今回は「前倒し仕事術」をテクニックではなく習慣として根付かせるためにはどうすればいいかについて考えてみます。

 「先送り」の対極である、仕事を前倒しすることによって得られる効用の第一は、いうまでもなく「先送り」を防ぐことができるようになることです。「先送り」をしてしまう背景にはさまざまな事情があると思いますが、多くの場合、そうせざるを得ない状況に陥ったためだと考えられます。

 例えば、予定外の飛び込み仕事に追われたために、当初の予定通りに仕事を進められなくなってしまう場合です。これは、単に時間が取られてしまうということだけでなく、精神的な面にも大きく影響を与えます。つまり「やる気」です。

 「前倒し仕事術」を実践できていれば、仮に飛び込み仕事が入ってきても、ある程度先行して仕事を進めているために、予定のやり繰りをすることができます。時間的にも精神的にも余裕を持って対応できるわけです。

 一方、常に予定が詰まっている状況では、そのつもりがなくても常に一触即発状態に置かれていることになり、ちょっとしたことですぐに窮地に陥ってしまいます。その結果、やむを得ず「先送り」に頼ることになりがちなのです。

 「前倒し」は、いってみれば暗い夜道を照らしてくれるヘッドライトのようなものです。ヘッドライトは今走っている足もとではなく、少し先を照らしてくれるからこそ意味があります。前方に障害物があってもそこに光が当たっていれば避けることができるでしょう。

 このような「前倒し」を普段から実践し、さらには習慣化するにはいくつかのコツがありますが、今回は以下の2つをご紹介します。

  1. 「一対一」の戦闘に持ち込む
  2. 途中経過をシェアする

1.「一対一」の戦闘に持ち込む

 「先送り」をしてしまう、あるいは「前倒し」ができない理由は、その仕事のプレッシャーが大きいためと考えられます。そこで、プレッシャーを小さくするために「小さなゴール」に分割するわけですが、これに加えて同時に相手にする「敵」の数を減らすようにします。

 どんなにたくさんのタスクを抱えていても、一度にできるタスクは1つだけです。タスクがたくさんあるという状況自体もプレッシャーになるため、まずは落ち着いて今やるべきタスクだけに意識を集中するようにします。

 その方法については、弁慶と牛若丸による伝説の「五条大橋の戦い」にヒントがあります。この戦い自体は一騎打ちでしたが、注目すべきは橋の上での戦いだったことです。一人で多数の敵を相手にするような場合でも、橋の上で戦っている限りは常に「一対一」の戦闘に持ち込むことができます。

 仕事においても、どんなにたくさんのタスクがあっても一度に取り組む仕事を1つに絞り込むことで、プレッシャーを減らし、焦りを封じ込めることができます。1つの仕事に取り組みながら同時にほかの仕事のことが気になっている状態では、注意が分散し、「虻蜂取らず」になってしまいます。

 カフェに出向いたり、会議室にこもったり、合宿を企画したりするのは、やっつけたい仕事を「橋」に誘い込んでいることになります。そういう意味ではいろいろな仕事を一気に片付けよう、という魂胆で臨むと本来の“地の利”をうまく活かせなくなってしまうかも知れません。せっかく一対一でじっくり取り組める環境に身を移したのに、そこでもいつもと同じように複数の「敵」を相手に注意を消耗させられることになってしまうからです。

2.途中経過をシェアする

 大きな仕事を「小さなゴール」に分割したくても、うまくいかない場合があります。例えば、「プレゼンの準備をする」という仕事の場合、見た目の上では、

  1. プレゼン資料を作る
  2. リハーサルをする
  3. プレゼン資料をブラッシュアップする

 といった大まかながらも「小さなゴール」に分割できそうですが、実際にやってみると、この3つのゴールは相互依存の関係にあることに気づきます。

 例えば、リハーサルをしてみて、もしプレゼン資料に不備が見つかれば、修正を余儀なくされるでしょう。当然リハーサルもやり直しになります。こうなると、資料が完全にできあがるまでは「リハーサル」を完了できませんし、「プレゼン資料を作る」というゴールも未達のままで、全体としていったいどこまで進んでいるのかが把握しづらくなります。

 このような場合は、小さなゴールに分割するのではなく別のアプローチを採ります。

 例えば、飛行機を着陸させるというパイロットの仕事を考えてみましょう。最終的なゴールは滑走路に無事に着陸することです。この時パイロットに求められるのは、小さなゴールを1つ1つクリアしていくことというよりも、刻々と変化する状況に応じて機体をコントロールしながら、少しずつ安全に滑走路に近づいていくことでしょう。

 その際に役に立つのが、コックピット内にあるさまざまな計器が示す情報や、管制塔からの指示です。特に管制塔とのコミュニケーションが重要になるはずです。着陸までの途中経過を逐一やり取りすることで、やり直しの利かないプロセスを慎重に進めることができるからです。

 プレゼンの準備においても、「意図した通りのプレゼンを行う」という最終的なゴールに“着陸”するためには、一人で進めるよりも、上司や先輩、あるいは同僚に“管制塔”の役割をお願いして、作っている途中の段階から、自分が意図していることがきちんと伝わっているかどうかを繰り返しチェックしてもらうようにするといいでしょう。

 これは、ソフトウェアをβ版の段階でリリースして、ゆるやかに完成に近づけていくというプロセスに似ています。一気に完成版まで作り切ってしまうと、後から“コース”を外れていたことに気づいてももはや手の打ちようがなくなってしまいます。待っているのは“オーバーラン”、または“クラッシュ”でしょう。

 以上、「前倒し仕事術」を習慣化するためのコツとして、多数の敵には「橋」で迎え撃ち、手強い敵には「管制官」を味方につけて戦うという2つをご紹介しましたが、根底にあるのは、常に自分にとって有利な状況に持ち込むようにする、という原則です。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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