マイクロソフト「早起き社長」の仕事術

「Windows Vista」「Office 2007」の企業向けライセンスの提供を開始したマイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は、新機能を駆使して疲れた社員に声をかける「優しい社長」をアピール。こんな会社なら働いてみたい?

» 2006年11月30日 19時43分 公開
[吉田有子,ITmedia]

 マイクロソフトは11月30日に「Windows Vista」「2007 Office system」「Exchange Server 2007」の企業向けライセンスの提供を開始した。記者発表の席では、同社のダレン・ヒューストン社長が、自社製品を使うワークスタイルを実践してみせた。従業員の誰よりも朝早く出社する熱心さに加え、疲れた社員には声をかけ「優しい社長ぶり」もアピール。こんな社長がいる会社なら働いてみたくなるかもしれない?

社長が朝一番に出勤するオフィス!?

マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長

 カナダのバンクーバー出身というヒューストン社長は「西海岸に住む人はみんな早起きです」と語る。3時間の時差のある東海岸とコンタクトを取る必要があるからだ。それは東京に来てからも変わらず、「徹夜組がいなければ、私が朝一番にオフィスに出勤し、明かりをつけます」という。

出社してPCの電源を入れ、Outlookを立ち上げる。Outlookのカレンダーには1日の予定を表示している

 ヒューストン社長は1日におよそ200通のメールを受け取るが、スパムメールをフィルタリングすると50通程度になるという。

 社長はメールを次々と処理していく。Outlook 2007の機能により、メールに添付してあるPowerPointなどのファイルは、その都度アプリケーションを立ち上げずに閲覧できる。自分の知らない社員がメールの差出人の場合は、所属部署や連絡先も確認できるのだ。

 マイクロソフトでは、さまざまな尺度から仕事に対する満足度を数値化する取り組みをしている。そんな折、ある社員から、仕事に対する満足度についてのメールが届いた。

 「顧客満足度は最も重要ですが、その次に重要なのは従業員が満足して仕事をしているかどうかです」というポリシーの社長は、早速Sharepoint ServerからExcelファイルになっている従業員満足度の生データを閲覧することにした。こんなとき、部下に「このデータをまとめてくれ」と依頼すると部下の仕事を増やしてしまうが、Excelファイルだから、管理職でも自分で扱うことができる。そもそも「早起き社長」のもとには部下もまだ出勤していないのだ。

 Excelの数値を見るだけでは分かりづらいので色付けをしてみると、他の項目が60〜70と高スコアな中、ワーク・ライフバランスの数値が42と低いので、赤く目立っている。

 「こんな状態が続いては、彼は燃え尽きてしまう」と心配する社長。早速Sharepoint Server上にある従業員の個人ページからメッセンジャーで話しかけてみることにした。

 「ワーク・ライフバランスの数値が低いようだね。どうしたの?」と尋ねると、「立ち上げの仕事で本当に疲れています。これが終わったら休暇をください」と頼む従業員。ヒューストン社長は快く応じ、従業員はめでたく休暇を得ることができたという。

高いマシンスペックも「Vista体験のためなら」

 マイクロソフトの新製品によって、こんな「社員に優しい会社」が実現する――かどうかはともかく、実際にはどんなメリットがあるのだろうか。

 Windows Vistaや2007 Office systemを導入するためには高スペックのPCが必要だと言われる。従来のものを置き換えるコストが高額だとしても、「それを上回るメリットを享受できるなら」と考える経営者だっているだろう。

 ヒューストン社長は「多くの人はマシンスペックの話をするが、良いユーザー体験をするためには必要だと思う」と答える。

 PCの償却サイクルもあるので、一度にすべての企業がVistaに入れ替えるわけではない。しかし「Vistaから得られる最大の価値は生産性と社員の満足度だ。ITに関するソフトやハードは急速に進化している。生産性を上げたければ、入れ替えていく方がよいのではないか」と強調した。

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