シャアの名言に学ぶ、仕事術(下)一流の目的と二流の才能に悩む(2/2 ページ)

» 2006年12月07日 00時28分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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『出資者は無理難題をおっしゃる』

 「Zガンダム」において、エゥーゴ出資者たちが求めるジャブロー攻撃に対し、経験者であるシャアは反対する。敵が要塞化しつつあるグリプスの攻撃を進言するが、この作戦はティターンズに対するエゥーゴを世間にアピールするもの。敵の本体を叩くべきと一蹴される。そこで出た言葉が、『出資者は無理難題をおっしゃる』だ。

 「面白いのはZ(ゼータ)の世界では、ティターンズやアクシズというトップダウンの組織と、エゥーゴという民主的であろうとする組織が対立している。民主的であるということがみんなで仲良くできるわけではなくて、意見の相違もあれば利益も絡むというわけです。出資者のほうは早く成果を上げろと、現場はそれは無理だと。そのために無理な作戦が強行されてしまったり」

 出資者と現場との間で板挟みとなり、かつ“民主的であること”にこだわるシャア。まさに中間管理職の悲哀であろうか。

 「なまじシャアには能力があるので、トップダウンをやろうとするとできてしまう。しかし逆にそのことの危険性を理解している。シャアがいなければ何もできない組織になってしまう。人がものを決めるということは責任を伴います。言われたとおりやって失敗したときは、誰かのせいにすればいい。命令した人のせいにすればいいわけです。ところが自分でそれを選んだときには責任を問えない。そこが、なぜカリスマという存在を容認してはいけないか、なのだと思います」

 悩みつつも、組織を動かしていくシャア。シャアの行動は半ば参考になり、半ばは反面教師として見るべきものになっていく。

一流の目的と二流の才能

 特に後半生のシャアは、悩み、苦悩する人物として、誰もが自分に重ね合わせられるキャラクターだ。

 『彼は常人よりは上位にありながら、ニュータイプとしては二流という、きわめて中途半端な才能を与えられていたのである。赤い彗星の異名を与えられた彼の前半生の輝きに比べ、ニュータイプとしての後半生が華やかさに欠けるのは、この見識と才能のギャップを突きつけられたからにほかならない』と、『評伝シャア・アズナブル』には記されている。

 「一流の目的と二流の才能。これは誰しもが持つものだと思うんです。でも、敢えてやらなくてはいけないと自分に課す。目標を掲げて、それを一流だと信じたら、それを成し遂げてみたいと思う欲は出ますよね。そのときに、自分の実力はこれだけかと思う。となると、二流だと自覚しながら自分でやらなくてはいけない。そういうことって日常生活の中でもあると思うんです」

 「しかし自分は能力がないから、とあきらめる前に、目的のために何ができるかを考えていく、努力していくという姿勢がシャアにはある。シャアが努力している姿は見えないわけですが、そのギャップに苦しみながら行動することが、人生における努力だと思うんですよ。私は」

 「子供のころ、○○ちゃん頭良いね、と言われて育ち、そのうちだんだん成績が落ちてきて、でもいい大学に行かなくちゃと思う。そんなときにシャアを感じるわけです。また、いい大学を出ていい会社に就職したはずなのに、え周りの皆こんなにできるの? と。学生時代にデキルヤツと言われていても、会社に入ってみたら当たり前だったというようなショック。その挫折でドロップアウトしないで、それでもやらねばならないとがんばっている」

 「そんな中で、昔、デキた時の彼を知っている人が部下として来るわけです。『シャアさんがんばってくださいよ』『昔すごかったらしいじゃないですか』『シャアさんならできますよ』──。一方で、なんでも要領よくできちゃう人もいますよね。アムロ。初めてものを任されたのに、ポンっとできてしまうわけです」

 「改めてシャアを見ると、痛々しいですよ。ずっと負け続けるわけですから。それでも人生を降りないでがんばる。一方で、何でもできちゃうけどやらないアムロ。いってみれば、アムロは見識は二流だが才能は一流なのです。勉強のできる子だったアムロよりは、見えない陰で一生懸命勉強して追いつこうとするシャアのほうが好きですね」

 キミはシャアになれるか?

評伝シャア・アズナブル

『機動戦士ガンダム公式百科事典』の編著者が描く《宇宙世紀の英雄》の生涯。シリーズの中で最も知名度、人気ともに高いキャラクター、シャア・アズナブル。彼の生涯を実在の人間を扱うかのように小説形式で再現する。“宇宙世紀の司馬遼太郎”こと皆川ゆかが放つ英雄の一代記。オタクアイテムだけでなく、普通のサラリーマンが通勤電車の中で気軽に読めることを目指した。

 ちなみに、シャア・アズナブルは、Char Aznableと書く。


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