ニュース
» 2007年03月05日 19時47分 UPDATE

週刊「仕事耕具」:オフィス家具はコストか投資か

堅調なオフィス家具市場。最近では日本の効率性を象徴するような「島型対向配列」だけでなく、知的生産性を高めるオフィス家具が増えてきた。

[鷹木創,ITmedia]

 オフィス家具市場が好調だ。内田洋行によれば、オフィス家具市場はバブル期にピークを迎え、業界の売り上げ額は年間9000億円に達したという。その後、景気後退とともに2003年には2500億円程度まで減少。それが、ここ数年は復活の兆しがある。2006年には3000億円まで回復した。

伝統の「島型対向配列」

 市場の回復傾向は、バブル期に購入した家具の老朽化による買い替え需要も要因の1つだが、付加価値を生み出す生産性の高いオフィスを構築したいという各企業の要望が大きいという。

 そもそも日本のオフィスに特徴的なデスクレイアウトは、「島型対向配列」というもの。いわゆる“お誕生日席”に管理職を配置し、その前に部下が役職順に向かいあって座っていく――おなじみのレイアウトである。

 米国に次ぐ世界第2位の経済大国に成長した日本において、このレイアウトは決して悪いものではなかった。欧米で主流の個室型レイアウトに比べて、島型対向配列は1人当たりの占有面積が小さい。せまい国土を生かすためか、スペースの効率性が著しく高いのだ。また、上司が部下に「おい、あの案件どうなった!」とデスク越しに指示できるのも特徴。個室にこもって何をやっているか把握しにくい欧米と比較すると、上意下達的なコミュニケーションは取りやすいわけだ。

 そう考えると、島型対向配列は、省スペースかつ報告・連絡に適した効率性重視のレイアウトといえそう。実は、個室型レイアウトではなく開放型レイアウトを採用する欧米企業でも日本式の島型対向配列を導入する企業が少なくないのである。

オフィスにキッチン!?

 だが、最近は日本国内でもオフィスに求めるものが変わってきた。コクヨや内田洋行、イトーキなどのオフィス家具ベンダーは、「知的生産性を重視するようになってきた」と声をそろえる。この知的生産性を高めるためのキーワードが「コミュニケーション」なのだ。

 このコミュニケーション、さきほど言及した島型対向配列の上意下達のためのコミュニケーションではない。企業の従業員間の会話を促進し、刺激させあい、アイデアを創発させるようなコミュニケーションを指す。

 そのためのオフィス家具として、コクヨや内田洋行は「キッチン」を用意した。「オフィスにキッチンなんて!?」とびっくりする読者もいるだろう。2006年12月に「オフィスキッチン」などを発表した内田洋行では、このキッチンを「部署を超えて集まるスペースだ」と位置づける。

st_of01.jpg オフィスキッチン

 キッチンというが、実際には大きめの机に「レンジ棚」や「冷蔵庫格納棚」などを設けているだけ。むしろ、椅子やソファを必要以上に置かないスタンディングスタイルで参加しやすい環境や、リビングをイメージさせる「木目」や「白」のカラーを採用したことが特徴だ。飲食を作るのではなく、飲食をきっかけにして気軽なコミュニケーションができるというわけだ。もちろん、ミーティングや作業などにも利用できるという。

 「オフィスキッチンといっても、さすがに全部署に配置する企業はありません。1フロアに1カ所だったり、2フロアで1カ所だったりするわけです。キッチンという気軽に参加できるスペースがあれば、自然と部署という垣根を越えて、人が集まってくるのです」(内田洋行)

 人が集まるスペースを用意できれば、役職や部署の垣根を越える――そうしたクロスオーバーを意識したのはコクヨも同じだ。同社が3月1日に発表した「CROSS OFFICE CONCEPT」は、企業で働く従業員のモチベーションを高め、活発なコミュニケーションを生み出すためのオフィス家具。このシリーズには、内田洋行と同様に、飲食をきっかけにしたコミュニケーションの場として「ナレッジダイナシリーズ」も含んでいる。

 実は、こうしたキッチン的な役割を担っているスペースはこれまでも企業の中に存在した。それが「喫煙スペース」である。タバコを吸う人たちが楽しそうに語らう姿を非喫煙者たちは複雑な心境で見ていた。この非喫煙者たちも気軽に参加できるスペースが、「キッチン」というわけだ。

st_of02.jpg ナレッジダイナ

オフィス作りはコストか投資か

 知的生産性を向上させるようなコミュニケーションの重要性は分かっていても、空間的制約から断念する企業も少なくない。スペース効率を考えると、どうしても島型対向配列に分があるためだ。「オフィスをコストと考えるか、投資と考えるかで(オフィスの)作り方は変わってくる」(コクヨ)。つまり、コストと考えれば効率性重視のレイアウトにならざるを得ない。一方、投資と考えればアイデア創発型のレイアウトになるという。

 イトーキによれば、「通常は作業デスクでも、状況に応じてミーティングスペースにレイアウト変更できるようなオフィス家具が売れている」という。空間的制約があっても、アイデア創発型のレイアウトも可能だ。フリーアドレスによって、席数を節約した日本ヒューレッド・パッカードの例もある(3月2日の記事参照)。

st_of03.jpg イトーキの庭をモチーフとしたミーティング家具シリーズ

 景気回復は、大都市・大手企業から始まり、今後は地方の中小企業に波及するとも言われている。中小企業に対してオフィス家具などを提案するライオン事務器では、「今あるオフィス家具を全部入れ替えるのではなく、ミーティングスペースの配色を寒色からオレンジ色などの暖色に変更するなど、ちょっとした工夫でオフィスの雰囲気は変えられる」という。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -