「数字のチカラ」を仕事に活かす──『食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 (上)』5分で読むビジネス書

人を動かす、自分を動かす。いずれにしても数字の力をうまく活かすことが効果を発揮する。数字を恐れず、手なずけるためのテキスト。

» 2007年05月21日 11時11分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

山田真哉食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 (上)(光文社)

 数字は絶対的であるがゆえに人に恐怖を与えることがあります。「ノルマは一日50件訪問」「60点以下は再試験」「10位以内に入らないと引退」などという表現は具体的であるがゆえに、人に猛烈なプレッシャーを与えるのです。これが、「ノルマはたくさん訪問」「できなかったら再試験」「売れなかったら引退」なら、まだゆとりがあり精神的にもきつくありません。(p.38)


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 本書は、150万部を超えるベストセラーとなった『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者である山田真哉氏の新刊だ。

 目次には、次のような見出しが並ぶ。

  • 数字は、99%の意識と1%の知識
  • 印刷所が7時49分と指定した理由
  • 科学って100%真実じゃないの!?
  • 「0円」広告はなぜ多いのか?

 思わず中身を読んでみたくなるようなものばかりだ(そういう意味では、ブログのタイトルの付け方の参考になるかもしれない)。

 共通点は「数字」が含まれていること。中を読み進めていくと、「数字」をうまく使いこなすためのヒントが豊富な事例とともに紹介されている。冒頭に引用したのはその1つで、やるべきことを数字で言い表すことによって、強い拘束力が生まれることを示している。

 別の例では、飲み会などをする際に「7時集合」ではなく「6時53分集合」と指定することによって、「その時刻に何かが起こるのか?」といった“謎”を込めることになり、結果として定刻に全員がそろう、という効果が得られるとしている。

 言うまでもなく「6時53分」という時刻そのものにはあまり意味はなく、むしろ具体的な数字を示すことに重きが置かれている。「7時」では、10分前に来る人もいれば、「5分くらいはいいだろう」と遅刻してくる人も出てしまう。あえて半端な時刻を設定することで、思い通りに人を動かすことができるわけだ。

 人を動かすだけでなく、自分を動かす上でも「数字」は役に立つ。例えば、根拠がなくても「この仕事は30分でやり終える」などと決めつけて、同僚や上司に宣言してしまうことで、30分でやらざるをえない状況が生まれる。

 加えて、実際にかかった時間を記録しておけば、「決めつけ」と実績とを比較できるようになるだろう。

BOOK DATA
タイトル: 食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 (上)
著者: 山田真哉
出版元: 光文社
価格: 735円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: ちょっとした雑談のタネを求めている人から、仕事に活用できる本格的な「数字の使い方」をマスターしたい人まで

 例えば「30分で終える」と決めてとりかかった仕事が実際には「45分かかった」場合、そのギャップである15分はなぜ生まれたのか、という疑問がわく。そうなれば、作業手順を見直すなどして、何とかしてこの15分をゼロにできないか、という具体的な目標に向かって考えるようになるはずだ。

 冒頭で引いたように「数字」には人に恐怖を与える「猛獣」的な側面もあるが、うまく手なずけて、その「チカラ」を利用できれば、自分自身も含め、人を前に進めるための頼もしいパートナーになる。そんな「数字」とのつき合い方を、本書からは学ぶことができるだろう。

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筆者:大橋悦夫 仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


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