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» 2007年06月01日 12時26分 UPDATE

シゴトハック研究所:実践シゴトハック 使途不明時間をなくす【解決編】

新しい取り組みを習慣にするのは難しいものです。人は現状のままでいた方が楽ですし、特に問題がなければなおさら現状維持に傾きます。ではどうしたら“習慣化”ができるのでしょうか。

[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 作業記録の習慣を続けるには?

 コツ:遠くにあるゴールを目の前の果実に置き換える


 本で読んだり、人に進められたりするなどして「これはいい! さっそく、やってみよう」と意気込んで始めたはずの新しい習慣も、そのほとんどは途中で続かなくなってしまうものです。例えば、「新しいダイエット方法」があった場合、それがいかに斬新なものであったとしても1日や2日では効果は上がらないでしょう。あるいは、「画期的な本の読み方」というものがあったとしても、まずはその「読み方」のいろはを学習し、習熟し、習得し、最終的に習慣として定着させることができて初めて、その「読み方」がもたらす効果を実感できるようになるはずです。

 仕事においても、世にあるさまざまな仕事術やワークスタイルを日々の仕事に採り入れて、これをある程度の期間にわたって継続しなければ成果には結びつかないでしょう。

 とはいえ、どんなことであれ「習慣にする」のは容易ではありません。新しい習慣を採り入れることは、少なからず現状の自分を否定することになりますから、あまり気が進まないのです。新しい習慣がいかに魅力的であったとしても、現状のままでいた方が楽ですし、特に問題がなければなおさら現状維持に傾くでしょう。

 今回は、作業記録を例に、この習慣化の課題にアプローチする方法を考えてみます。

「せざるを得ない状況」を作る

 筆者は、作業記録をつけることの効用について、記事を書いたり話をしたりする機会が多いのですが、そこから得られるフィードバックはおおむね次の3種類です。

  1. 作業記録を取ると良さそうのは分かるが、面倒に感じる
  2. しばらくやってみたが、いまいちしっくりこなかった
  3. 不可能だと感じるし、そもそも必要性を感じない

 (1)は、習慣として定着する一歩手前で足踏みしている状態です。この壁は、「面倒さ」を克服するのに十分な「メリット」が作業記録から得られると実感できれば、乗り越えられるはずです。

 (2)と(3)は、認知的不協和と呼ばれるもので、頭では分かっていても、行動が伴わない時、この食い違いを埋めるために、動かしやすいほうを自分に都合の良いようにずらそうとします。

 例えば、仕事が立て込んで参加できなくなってしまった飲み会について「どうせ、たいして面白い話は出なかっただろう」と決めつけたり、喫煙者が「タバコは健康に悪い」と言われると「吸っているのは1ミリグラムだから私は大丈夫」と自分に言い聞かせたりします。

 作業記録にしても、「自分には合わなかった」「必要性を感じない」といった声があがるのは、これを習慣にすることの難しさ、あるいは敷居の高さを物語っていると言えるでしょう。

 では、具体的にどうすれば作業記録を習慣にできるでしょうか。ここで、作業記録以外で、すでに習慣として定着していることに目を向けてみます。例えば、自転車。読者の皆さんはほぼ全員が自転車を補助輪なしで乗れるはずです。補助輪なしで乗れるようになったのはなぜでしょうか。

 答えは2つあります。1つは、「補助輪を外したから」です。補助輪なしで乗れるようになるには、まず補助輪を外す必要があります。もう1つは、「補助輪を付けて乗っていると恥ずかしいから」です。子どもの頃を思い出してみてください。周りの同級生たちが次々と補助輪なしでスイスイと自転車に乗れるようになっていくのを目の当たりにすると、焦りを感じたはずです。そうなれば、ムキになってでも練習をするでしょう。

 つまり、「補助輪なしで乗らざるを得ない状況」を作ることによって、気づいたら補助輪なしで自転車に乗れるようになったわけです。

 作業記録にもこれと同じやり方が適用できます。その際のルールが以下の2つです。

  1. 作業記録をつけなければペナルティが課されるようにする
  2. 作業記録を正確につけると、ご褒美が得られるようにする

 とはいえ、ルールをつくっても1人でやっている限りは「このルールは現状に合ってない」などと認知的不協和を持ち出して現状維持に努めるのが人間ですから、ここは職場の同僚を巻き込んで2人で取り組むようにします。

 具体的には、毎日作業記録をつけて、翌日に「どちらが使途不明時間が多かったか?」を競うようにするのです。そして、使途不明時間が多かった方が、少なかった方にランチをごちそうします。

 使途不明時間は作業記録をつけていなければどんどん増えてしまいますから、作業記録をつけざるをえなくなるでしょう。このようにランチを賭けることによって、ペナルティとご褒美が同時に得られます。習慣にならないうちは作業記録をつけるのは苦痛です。でも、作業記録をきちんとつけることで、使途不明時間を削減し、それによってライバルを出し抜くことができるとなれば、ムキになってやるでしょう。勝てばフリーランチ(ご褒美)、負ければダブルランチ(ペナルティ)ですから、なおさらです。

遠くにあるゴールを目の前の果実に置き換える

 このように、人は行動した結果がすぐに得られないと分かるとなかなか取りかかれないものです。あるいは取りかかるのを先延ばしにして、すぐに結果が得られる別の行動にスイッチします。目の前の仕事をよそにメールチェックをしてしまう、あるいはメールが届けばすぐに確認してしまうのも、目の前の仕事はやってもすぐには結果が出ないからです。その点、メールは開封すれば即座に結果が確認できます。行動と結果の距離が短いわけです。

 習慣にする際に大切なことは、「習慣にする」という遠くにある最終的なゴールを、すぐに得られる「果実」に置き換えることです。もちろん、最終的に「習慣にする」というゴールは変わらないのですが、そこに近づくために、途中に給水コーナーを設けて、「とりあえず次の給水コーナーまではがんばって走ろう」と自分を励ますわけです。

 作業記録を習慣にする際に、同僚とランチを賭けるのも同じ理屈です。やらなくても何も変わらない、ということでは人は動きませんので、やらなければランチをおごらされることになる、つまりあるのが当然のことをリスクにさらすことによって、それが行動を起こす理由になるのです。そしてその行動の結果はフリーランチという「果実」につながります。

 ちなみに、筆者の事務所ではスタッフに作業記録をつけてもらうために次のようなルールを作っています。

  • 毎月の報酬は作業記録の内容に基づいて算出する

 作業記録はオンラインで共有しているのですが、もし作業記録にモレがあれば、せっかく仕事をしてもその分の報酬は支払われないことになりますから、スタッフとしては作業記録をつけざるを得ない、というわけです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


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