段取りとは何か──。それは、リミット(制約)を基準にしてリソース(材料)を最適に配分することです。今回は、この配分をどう考えていけばいいか検討します。
「やっつけ仕事」しないようにするには?
コツ:リミットとリソースの両面から考える
前回は「やっつけ仕事」をしないようにするために、走り出す前にきちんと段取りを考える方法をご紹介しました。具体的には、スケジュールに“山”と“谷”を作る、すなわち、2つの異なる性格の仕事を交互に行うことで、自分を飽きさせないようにする、というものでした。
こうすることで、やみくもに仕事を押し進めるのではなく、長い目で仕事を俯瞰しつつ、地に足の着いた仕事の進め方ができるようになります。
今回は、これをさらに一歩進めます。一日のスケジュールを考える際に浮かぶことが多い、以下の疑問について考えながら、一日の仕事の見通しを正確に把握する方法をご紹介します。
この疑問に答えることは、段取りを考えるという「非現実ワーク」に対する「現実ワーク」に当たります。「段取りを考えよう!」と思っても、具体的に何をすればよいのかが分かりにくいため、すぐには手が動きませんが、例えば「本当に今日中にやり切れるのか?」と自問すれば、すぐにでもYesかNoかを答えられるはずです(「非現実ワーク」と「現実ワーク」については、前回の記事を参照)。
さて、「段取りを考える」という作業に改めて目を向けてみると、その構成要素には「リミット」と「リソース」の2つがあることに気づきます。それぞれの意味は以下の通りです。
つまり、リミット(制約)を基準にしてリソース(材料)を最適に配分する作業が「段取りを考える」ことの実態になるわけです。この2つの間には以下のような関係があります。
例えば、プレゼン資料作成の期限(リミット)が3日後なのか3時間後なのかによって、できること(リソースの使い方)が変わります。3日あれば関連資料を読み込んだり、詳しい人に意見を求めるなどの「バックデータの収集」に時間を費やすことができますが、3時間後となっては、一刻も早く形としてまとめていくことに集中する必要が出てきます。
もし、期限がなければ、いつまでたってもプレゼン資料が完成することはないでしょう。
「段取りを考える」ことは、例えるなら、“リソースという「粘土」をこねて、リミットという「型」にぴったりとはめ込む作業”ということになるでしょう。「型」を外せば“作品”が完成します。
リソースには無限の用途と可能性があります。どんな形にも変形させることができます。でも、リミットがなければ形になることはないのです。少なくとも「いつ形になるか」「どんな形になるか」を約束するのは難しいでしょう。人生が有限だからこそ、生き方が問われるのと同じように、仕事も、納期があるからこそ段取りをつけて取り組む必要があるのです。
このように、リミットはリソースを最適な形で活用するうえでは欠かせないものですが、常にリミットが先に決まっていて、これをもとにリソースの活用計画を立てるのでは防戦一方で、「攻めの仕事」ができません。
そこで、「リソースありき」で段取りを考えるようにします。
例えば、ある作業にかかる時間を見積もる場合、リミットが決まっていれば、「かかりそうな時間」ではなく「終わらせるべき時間」あるいは「終わらせたい時間」を割り当ててしまいがちです。
そうではなく、いったんはリミットのことは忘れて、「これだけは必要」という時間を割り当てるようにするのです。こうすることで、「本当にこれだけの時間が必要なのか?」という疑問がわくので、これに答えることで、その妥当性について改めて考えさせられることになります。
こうして、目的とする仕事に必要な「リソース活用計画」を作ったうえで、初めてリミットという「型」に当てはめてみます。この時、ぴったりはまればそのまま仕事に取りかかればいいですし、あふれてしまうようであれば、別の方法を考えたり、別の人に手伝ってもらうなどの「リソースの補完」を検討します。
大切なことは、最初からリミットに合わせた形でリソース活用を考えないことです。
このような「リソース活用計画」を作るうえで役に立つのが「Nozbe」というサイトです。
詳しい使い方は今回は割愛しますが、以下のように、やるべきタスクを登録し、それぞれの想定時間を割り当てることで、合計時間が分かります。
この合計時間を見て、現時点での残り時間より多いか少ないかで、リミットに収まっているかどうかを数字で確かめることができます。
単にタスクが並んでいるだけのリストを眺めていても、本当にそれを今日中に終えることができるかを答えることは難しいでしょう。
また、contextsという機能があり、本来は「電話の用件」や「メールの用件」など、状況(=context)をタスクに割り当てておくことで、似たようなタスクを抽出する、という使い方が想定されています。まとめて「電話の用件」を片づけるといった場合に便利なのですが、これを「状況」ではなく「時間帯」のグループ分けに見立てて使ってみます。
この例では、上から順に以下のように割り当てています。
状況 | 時間帯 |
---|---|
Just-do-it | 6:00〜9:00 |
Errand | 9:00〜12:00 |
Phone | 12:00〜15:00 |
15:00〜18:00 | |
Home | 18:00〜21:00 |
Office | 21:00〜24:00 |
たまたまですが、早朝は「Just-do-it」(すぐやる)、午後は「Phone」や「Mail」、18時は「Home」(自宅)ということで、状況と時間帯の結びつきに関連が全くないわけではないため、覚えやすいでしょう(やや強引ですが)。
こうすることで、各時間帯(リミットは3時間)に実際にどれぐらいのリソース(時間)が割り当てられているかがわかります。
「今の時間帯」にどのタスクをやればよいかが分かると同時に、他の時間帯のことはいったん忘れることができるため、とにかく「今の時間帯」のリミットに集中すればよい、という状況が生まれます。
また、翌日以降のタスクは、さらに下の状況(Computerなど)を割り当てておくことで「今日の視界」からは見えなくすることができます。「気になること」を一時的に排除できるわけです。
「Nozbe」はもともとはGTDを実践するためのツールですが、今回のように一日の段取りを考えるという限定的な用途にも使えるでしょう。なお、以下のように、一日全体を見ることもできます(NextAction)。
各時間帯ごとに区切りを分かりやすくするために、「▼12:00〜15:00------」といったタスクを入れています。タスクに割り当てられる最小時間は「5分」のため、その分だけアシが出る結果となっています。これは、仕様上避けられないのですが、この時間を各時間帯ごとに確保するバッファ時間と見なすこともできますので、必要に応じて時間のサイズを調節するといいでしょう(時間帯ごとのバッファ時間については、2006年11月の記事参照)
仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。
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