1日にプラスαの時間を――「ながら学」入門編樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

過去50年間にわたり、何かをしながら何かをしてきた。この経験から「ながら学」なる学問を提唱したい。上手に「ながら」すれば1日の時間を増やせるのだ。

» 2007年06月21日 13時40分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 過去50年間「ながら学」を研究してきた。研究なんていえばかっこうがいいが、つまりは何かをしながら何かをしてきたわけだ。受験時代から、学生時代、社会人になった後も、ずっと「ながら」を研究してきた。毎日の生活の中で上手く「ながら」を活用できると、1日が25時間にも26時間にもなる。

「ネガティブながら」と「ポジティブながら」

 筆者のいう「ながら」とは、1つのことをしながらもう1つ以上のことを実行し、それぞれを単独で行うよりも、より大きな効果を得ること――である。

 誰でもできて最も簡単なことは、通勤時間の活用である。電車通勤であれば、電車が目的地まで運んでくれる。この時間に何もしなければ会社へ行くだけのことだが、同時に英会話などを勉強すれば「ながら」が成立するわけである。座って30分間。車内で勉強ができれば、1日24時間に30分間を足せる。その日は24時間半の時間を獲得したことになる。

 こうして1日をいかに過ごすか、真面目に考える学問が「ながら学」なのだ。

 「ながら」には、「ネガティブながら(負ながら)」と「ポジティブながら(正ながら)」がある。受験生のころを思いだしてみよう。数学の問題を解くのに、お笑い番組を見ていたら問題が解けるだろうか。あるいは仲良し友達と電話しながら数式が解けるだろうか。これは、どっちも上手くいかない可能性が高い。まさにネガティブながらの典型例だろう。

 数学の問題に行き詰ったとき、美味しいコーヒーを飲んで気分を変えてたら、さっと解が頭に浮かんだ――そんな場合はどうだろう。美味いコーヒーを楽しみながら、数学も解けたということであれば、ポジティブながらに認定してもいい。癖になると、美味いコーヒーを飲まないと、数学が解けなくなり、試験の最中にコーヒーを求めてしまうデメリットもあるので要注意だ。

 ながら学では、テレビを見「ながら」は結構難しいとされている。テレビの番組は、視聴者に「ここで笑え」「ここでどきっとしろ」と迫る要素があるからだ。数少ないテレビのながらは、ご飯食べながらだろう。だが、これで夫婦や家族のコミュニケーションが阻害されてしまうことになれば、ネガティブながらといわざるを得ない。一方、テレビを見ながらトレーニング用の室内自転車をこぐということであれば、娯楽系の時間と、体力強化系の時間を組み合わせることができる。これはかなりポジティブだ。

 テレビゲームやネットワークゲームでは、ながらはほとんど不可能。目まで疲れて、寝る時間がなくなり、朝起きられず、ネガティブながらの極端なケースといっていいだろう。その点、iPodをはじめとした携帯オーディオプレイヤーで音楽を聴いたり、ラジオ番組を聴いたりするのはかなりの自由度がある。思考系の時間には音楽が適しているということもあるだろう。ただし、感動した映画のテーマソングだと思い出して涙が出る、歌詞が明確に分からないと歌詞が気になる、音量が大きすぎると脳への刺激が強すぎる――など、思考に集中できないケースもあるので注意が必要だ。

状況 ネガティブながら ポジティブながら
通勤時間 英会話の勉強
睡眠
数学の問題を解く お笑い番組を見る
仲良しと電話
美味いコーヒーを飲んで気分転換
テレビを見る ご飯を食べる
※コミュニケーションが阻害される場合
筋肉トレーニングをする
音楽を聴く 思考系作業

「ながら」のやりすぎに注意

 「ながら」にも「2点ながら」「3点ながら」などと、どんどん点数が増えると高級になっていく。通勤時間に缶コーヒーを持ち、座るために30分早く家を出て、のろのろ走るバスに乗らずに歩いて駅まで20分。この間、今日のToDoの項目をICレコーダに録音していけば、これも軽いながらとなる。40分の車内で最初の15分を寝る。タニタのバイブレーションタイマーで起きたら、ウェットティッシュで顔を拭き、缶コーヒーを飲むか、チョコレートをひとかじり。今日の予定を見直して、読書に入る――なんてこともありだ。

 通勤時間の「ながら」で気をつけたいのは撤収作業。携帯電話でもタニタのバイブレーションタイマーでも何でも構わないが、目覚ましのタイマーを降りる1つ前の駅に到着する時間に仕掛けよう。これを忘れたり、勉強に打ち込みすぎたり、2度寝してしまったりすると、撤収作業が大慌てとなって、本や予定表、ICレコーダなどの「ながらツール」をひろげたまま降りるハメになる。これは避けたい。

Biz.IDスタッフの「ながらツール」

 さて、こうした「ながら作業」がどれだけの時間を獲得しているかお分かりだろうか。ここまでが「ながら学」の基礎コースである。次週以降は、空間移動系、思考(勉強)系、運動系、いやし系、空腹系を全部満足させる「中級編」「上級編」に入っていこう。

今回の教訓

1日を短く過ごしたいか、長く過ごしたいか──がポイントだ。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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