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» 2008年01月29日 17時00分 UPDATE

5分で読むビジネス書:フランクリンが実践した良い習慣の作り方と続け方──『フランクリン自伝』

身につけたい良い習慣としてフランクリンが挙げた「フランクリンの十三徳」。しかしその実践はフランクリン自身も困難だった。それでも、実践しようとする意志がもたらしたものがある。

[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

リン・G. ロビンズ『フランクリン自伝』(岩波書店刊)

 しかし、やがて私は思ったよりずっと困難な仕事に手をつけたことに気がついた。何かある過ちに陥らぬように用心していると、思いもよらず、他の過ちを犯すことがよくあったし、うっかりしていると習慣がつけこんで来るし、性癖のほうが強くて理性では抑えつけられないこともちょくちょくある始末だった。

 そこで私はとうとう次のような結論に達した。完全に道徳を守ることは、同時に自分の利益でもあるというような、単に理論上の信念だけでは過失を防ぐことはとうていできない。確実に、不変に、つねに正道を踏んで違わぬという自信を少しでもうるためには、まずそれに反する習慣を打破し、良い習慣を作ってこれをしっかり身につけねばならないというのである。

 で私は、この目的のために次のような方法を考え出した。(p.136)


3

 前回ご紹介した『ベンジャミン・フランクリン富を築く100万ドルのアイデア』に続き、今回もフランクリン本を取り上げる。前回の『100万ドルのアイデア』は特に「お金にまつわる習慣」にフォーカスしていたのに対し、今回の『フランクリン自伝』は「習慣」そのものを深く掘り下げる内容となっている。

 特に「フランクリンの十三徳」と呼ばれる、フランクリン自身が試行錯誤の末に編み出した、良い習慣を身につけるための手順と方法の解説が本書のキモだ。

 時間がない人は、冒頭で引用した個所のすぐ後(136ページ)から読み始めるといい。このページ以前は、この方法論を思いつくまでの歴史と背景が語られ、以後はこの方法論の解説とその実践事例となっているからだ。

 その「フランクリンの十三徳」とは次のようなものだ(それぞれの徳の説明文は口語体で分かりやすく書かれているハイブロー武蔵訳の『若き商人への手紙』によった)。

  1. 節制 頭や体が鈍くなるほど食べないこと。はめをはずすほどお酒を飲まないこと。
  2. 沈黙 他人あるいは自分に利益にならないことは話さないこと。よけいな無駄話はしないこと。
  3. 規律 自分の持ち物はすべて置き場所を決めておくこと。仕事は、それぞれ時間を決めて行うこと。
  4. 決断 なすべきことをやろうと決心すること。決心したことは、必ずやり遂げること。
  5. 節約 他人や自分に役立つことにのみお金を使うこと。すなわち無駄遣いはしないこと。
  6. 勤勉 時間を無駄にしないこと。いつも有益なことに時間を使うこと。無益な行動をすべてやめること。
  7. 誠実 だまして人に害を与えないこと。清く正しく思考すること。口にする言葉も、また同じ。
  8. 正義 不正なことを行い、あるいは、自分の義務であることをやらないで、他人に損害を与えないこと。
  9. 中庸 何事も極端でないこと。たとえ相手に不正を受け激怒するに値すると思っても、がまんしたほうがよいときはがまんすること。
  10. 清潔 身体、衣服、住居を不潔にしないこと。
  11. 冷静 つまらないこと、ありがちな事故、避けられない事故などに心を取り乱さないこと。
  12. 純潔 性的営みは、健康のためか、子供を作るためにのみすること。性におぼれ、なまけものになったり、自分や他人の平和な生活を乱したり、信用をなくしたりしないこと。
  13. 謙譲 イエスおよびソクラテスを見習うこと。

 いかがだろうか。いずれもかなり厳しい内容であり、これをすべて実践するのは困難に思える。いったいフランクリンはこの十三徳にどのように取り組んだのか。まずは次の表を見てほしい。このような“ウイークリーチャレンジシート”を作り、毎週1つずつ「今週の課題徳」を決め、これに沿った形で生活を送ったのだ。

1.節制              
2.沈黙      
3.規律  
4.決断          
5.節約          
6.勤勉              
7.誠実              
8.正義              
9.中庸              
10.清潔              
11.冷静              
12.純潔              
13.謙譲              

 

BOOK DATA
タイトル: フランクリン自伝
著者: ベンジャミン・フランクリン著、松本 慎一、西川 正身訳
出版元: 岩波書店刊
価格: 693円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 望ましい習慣を継続したい、と思っている人

 例えば、「今週は節制だ」と決めたなら、ほかの徳のことはいったん忘れて、とにかく「節制に反する行為はどんな小さいことでもこれを避ける」ことを徹底する。そのうえで、毎晩その日一日を振り返り、その日に犯した過失を思い浮かべる。そしてその過失に該当する徳のマスに印を入れる(この時、「節制」以外の過失があってもとりあえずはよいことにする)。

 こうして一週間連続で「節制」の欄に印がつかなければ、この徳の習慣は強められた、とみなすことができるわけだ。

 フランクリンは、このやり方で1つずつ徳を攻略していき、13週間で一通りの徳をカバーし、これを年に4クール回せる、と考えたようだ。だが実際には困難だったようで、次のように告白している。

 大体から言えば、私は自分が心から願った道徳的完成の域に達することはもちろん、その近くに至ることさえできなかった。


 その上で、さらに続ける。

 それでも努力したおかげで、かような試みをやらなかった場合に比べて、人間もよくなり幸福にもなった。ちょうど法帖を手本として完全な筆法を会得しようとする者が、手本通りの理想的な筆蹟になることはできなくても、骨折っただけ筆蹟がよくなり、きれいに明瞭に書いてさえあれば、相当見られるようになるのと同様である。


 ここから学べることは、次の2つだろう。

  1. 困難なチャレンジは細かく分解して少しずつ取り組む
  2. ゴールに到達することよりもそこに近づき続けることに重きを置く

 この教訓は、現代に生きるわれわれの仕事や生活にもそのまま応用できるはずだ。

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