SCAMPER法――「10分以内にアイデア3つ出さなきゃ」をかなえる方法アイデア創発の素振り(4/4 ページ)

» 2008年04月15日 16時55分 公開
[石井力重ITmedia]
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SCAMPERはどうやってできたの?

 日本創造学会の、あるベテランの先生からのアドバイスによると、E.P.トーランスの『創造性の教育』(誠信書房、1966年刊、原題『Guiding Creative Talent』1962年刊)で記載されたリストが、現在確認されているもっとも最初のSCAMPER風の知識セットと思われる。ただし、発想ツールとして紹介されているのではなく、発想の柔軟性を評価するための項目として紹介されている。

 創造性テストの柔軟性を評価する項目において、以下の項目が示されている(『創造性の教育』P.316より)。

  1. 修正
  2. 追加
  3. 色の変更
  4. 形の変更
  5. 組合せ
  6. 分解
  7. 拡大
  8. 縮小
  9. 動作
  10. 数の増加
  11. 位置
  12. 材料の質
  13. 再配置
  14. 転換
  15. 感覚に訴える(耳)
  16. 感覚に訴える(眼)
  17. 感覚に訴える(鼻)
  18. 感覚に訴える(触覚)
  19. 代用
  20. 除去

 なお、最も端的にSCAMPER誕生の流れを示しているものの1つに、マイケルマハルコの『アイデアのおもちゃ箱』(ダイヤモンド社、1997年刊、原題『Thinkertoys: a Handbook of Creative-thinking Techniques』1980年刊)の以下の文章を紹介しよう。


 SCAMPER(7つの問いかけ)は、アイデアを刺激する問いのチェックリストである。

問いのうちいくつかは、最初アレックス・オズボーンという創造性の第一人者によって提案されたものである。その後ボブ・イバールが次のような覚えやすい頭文字に並べ変えた。

  • S=Substitude? 代用品はないか
  • C=Combine? 結びつけることはできるか
  • A=Adapt? 応用することはできるか
  • M=Modify?=Magnify? 修正、あるいは拡大できないか
  • P=Put to other users? 他の使いみちはないか
  • E=Eliminate or minify? 削除か、削減できないか
  • R=Reverse?=Rearrange? 逆にするか、再編成できないか
(マイケル・マハルコ『アイデアのおもちゃ箱』P.80より)

 ちなみに、オズボーンの著書として、現在手に入る復刻版の『創造性を生かす』(創元社、2008年、原題『YOUR CREATIVE POWER』1948年刊)には、SCAMPERという表現はないが、項目立てて、SCAMPER質問に相当する項目が見れられる。


  • 第19章 試案を得る
  • 第20章 利用法を考える
  • 第21章 借用と翻案
  • 第22章 一ひねり変化させてみよう
  • 第23章 拡大しよう
  • 第24章 縮小しよう
  • 第25章 置き換えてみよう
  • 第26章 配置変え・再調整をしよう
  • 第27章 反対を考えてみよう
  • 第28章 結合させる

 今回紹介した48の質問が絶対無二のものではない。SCAMPERを発展させた詳細版のリストには、今までに見聞きした中でも、複数のアレンジ版が存在する。ある企業では100近い質問項目からなるオリジナルのSCAMPERを持っている例もある。

 つまりSCAMPERは、オズボーンの源流から、彼の流れをくむ人々がさまざまなナレッジを蓄積した結果なのだ。今回連載で翻訳した『creativity UNBOUND』はその中の主要なテキストブック。同書のSCAMPER表現を、筆者は好んで利用している。

 次回は、「TRIZ」という開発理論を同じようにトリガーリストにしたものを紹介する。

著者紹介 石井力重(いしい・りきえ)

著者近影

 事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」


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