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» 2008年05月16日 22時04分 UPDATE

樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」:そんなに用心してどこ行くの? 超慎重海外安全確保術

欧州では、空港へ着いた時から出国するまで、日本人の観光客1人あたり、3人の犯罪者が隙を狙っていると言われている。出張や旅行先で何に気を付ければいいのだろうか。

[樋口健夫,ITmedia]

 ある大学で、海外旅行の危険について話してほしいと頼まれた。大きな教室の演台で、招待してくれた先生が筆者の略歴を紹介し終わる時のことだ。斜め後ろに立っていた筆者は演台の前に進み、何かにつまずいたかのように先生の腰にポンと当たり「あ、すみません」と謝った。

日本でよく見る財布を後ろポケットに入れて歩く人

 「じゃあ、樋口さんどうぞ」と言われて、筆者は「始める前に、まず先生の財布をお返ししましょう」と左手の財布を高く上に差し出した。先生も学生たちも仰天した。先生のズボンの右後ろポケットから長く細く突き出ていた財布を、後ろからぶつかる瞬間に抜き取るという典型的なやり方でスリを“実演”して見せたのだ。

 日本では、財布をズボンの後ろポケットに入れて歩いている人はまだよく見る。もしイタリアやフランスでそんなことをしたら、「どなたでも構わない。いつでも持っていって欲しい」と言っているようなものだ。実際、スリの初心者である筆者ですら、簡単に抜き取ることができた。「絶対に財布を見せて歩いてはいけません。ましてやズボンの後ろポケットに財布を入れて歩くのは自殺行為です」。筆者は学生たちに訴えた。

 欧州では、空港へ着いた時から出国するまで、日本人の観光客1人あたり3人の犯罪者が隙を狙っていると言われている。海外旅行で遭遇する犯行の詳細は、ヨメサンとの共著『海外旅行安全ガイド なれた人でもダマされる44の手口』(風濤社)を読んでいただきたい。ここでは筆者自身の防犯対策を紹介しよう。

防犯ベルは「鳴らすテスト」でアピール

st_bou01.jpg 安全ピンを付ける

 まずパスポートは背広の内側だが、大型の安全ピンでポケット上から固定してしまおう。筆者もメーカーのスタッフと一緒に出張する時には、現地に到着後、全員に大型安全ピンを1つずつ配布し、パスポートや財布を守ってもらうことにしていた。欧米では、左右のズボンのポケットの外からも安全ピンで固定していた。

 この方法は手軽にできるのでオススメだが、1つだけ。安全ピンは、飛行機の手荷物としては認められないので注意しよう。

 1人旅の時には、どんなに荷物が多くてもトイレには全部持って入る。誰かと一緒の場合には、細引きのひもでカバンを通して端を握っていた。

 列車では、どんなことがあっても網棚にはカバンを置かない。ヒザの上か下が定位置だ。長距離列車では、100円ショップで売っている自転車用のナンバー式ワイヤロックで網棚のポールにくくり付ける。列車の部屋で他人と同室なら、旅行が始まったらすぐに防犯ベルを鳴らすデモンストレーション。警報装置が付いていることをアピールするのだ。車内で知らない人から飲食を勧められても、丁重に辞退していた。睡眠薬が入っている可能性があるからだ。

 筆者はこれまで、パナソニックの防犯ベル(110番ブザー)を、1973年から数十個は購入してきた。新たに海外駐在する同僚たちへのお土産として渡すためだ。現地では筆者が渡した防犯ベルで、強盗を追い払うことができた同僚もいる。

 大きな音を立てるのが1番いい。筆者も海外ではプラスチックの笛を首から掛け、キーホルダーにも金属の笛を付けている。

“携帯金庫”を持ち歩き

 空港や駅や裏通りと同じくらい、ホテルのロビーは危険地帯だ。カウンターでチェックインしている時のバッグは両足の間に挟む。ベルボーイに預けたカバンからも目を離してはならない。

 さらに部屋に入ると、まず「Don't Disturb」の札を外に掛ける。窓のカギ、ベランダのドアが開いていないかも確認する。外からのノックには内側チェーンを掛けなければ絶対に開けない。チェックイン直後や夜中にノックされることがあるが、強盗かもしれないのだ。

st_bou02.jpg

 一流ホテルでも、誰もが自由に客室階までアクセスできるなら油断はできない。連泊する場合、ハウスキーピングが部屋の扉を開けたまま作業していることもある。国によっては危険極まりないので、筆者はいつも携帯用の金庫を持参している。pacsafeのTravelsafeである。

 すでに20年近く使っている。これはメッシュ状にワイヤが入った布のバッグで、さらにワイヤと南京錠で安全なところにくくり付けられる仕掛けの優れものだ。部屋に金庫がないところで、受付の貸金庫に入れる場合に、少なくともこの布の金庫に入れて固定してしまうか、超小型の布のトートバッグにまず入れて、外から中身を見ることができないようにして、預けることだ。

「ポッケの中の防災セット」

st_bou03.jpg 「ポッケの中の防災セット」

 海外での危険は犯罪だけではない。最近の中国西部の大地震のような災害に対しても、少なくとも最初の2時間を生き延びることで混乱もある程度収まり、危機を脱出できるのではないだろうか。

 筆者は、大災害の時にまず必要となる道具(マスク、三角布、カードラジオ、多目的ナイフ、笛、粘着バンド、超小型フラッシュライトなど)をセットにして、常に携帯できる安全防災セット「ポッケの中の防災セット」を提案したことがある。実際に東芝の子会社が発売した。

 これも必ず国内外の旅行には持参している。かなりの数を販売したが、まだ若干のセットをアイデアマラソン研究所で、定価1575円(送料390円)で扱っている。アイデアマラソンのサイトを通じて、お問い合わせいただきたい。残りはわずかなので、売り切れはお許しを。なお、ポッケの中の防災キットには、ナイフが含まれている。飛行機に乗る時は、荷物を預けるか、ナイフを除いて持って行くように。

st_bou04.jpgst_bou05.jpg 中身はこんな感じ

 これだけ用心している人には、犯罪も犯罪者も近寄らないものだ。だからといって、筆者は決して油断をしないが――。

今回の教訓

「ポッケの中の防災セット」――残りわずかなので、売り切れはご容赦を。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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