第14回 「不安」は、自分で決断することを通じてのみ解消できる実践! 専門知識を教えてみよう(4/4 ページ)

» 2008年07月11日 09時49分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

「不安」は、自分で決断することを通じてのみ解消できる

 以上、「肯定的なメッセージ」「制約のある自由」「同格のコミュニケーション」という環境がそろうと、人は「自分で考えて、行動する」ことが少しずつできるようになります。

 当然ですが最初はなかなかうまく行きません。いいんです。うまく行かなくたって当たり前です。誰だって最初からなんでもできるはずがありません。それでも、「自分で考えて、行動する」ことを続けなければいけないのです。なぜなら、

  • 「不安」は、自分で決断することを通じてのみ解消できる

 からです。

 前回でこの話を始めるとき、私は「正しいかどうかを判断する基準」を求める質問が多いことに驚いた、と書きました。それで分かったのは、「人に与えられた基準を守る」ということに慣れすぎてしまった人が意外に多いらしいということでした。

 いや、ルールというのは大事なものですし、それを守ることが悪いわけではありません。しかし、それしかできないのでは困ります。「人に与えられた基準」はたいてい硬直化していくもので、必ず現実とのギャップが起きてしまうからです。

 今回例に挙げた「選手とコーチ」の話にしても、仮にコーチが対戦相手を分析して完ぺきな作戦を与えて選手を試合に送り出したとしても、実戦では予想外のことが起こります。選手が自力で相手の変化に対応していけるようでなければ、勝ち抜くことはできません。

 実際、「人に与えられた基準」を頼りにしていると、変化に弱くなるものです。営業先の会社で予想外の状況が起きると慌ててしまい、せっかくのチャンスを活かせない――そんなシーンを私は営業マンと同行した時に何度も見てきたので、「予定通りに行かないことをやたらに恐れる症候群」と名づけたぐらいです。仕事はコンピュータゲームではありませんから、攻略本の通りには行かないのです。

 「ルール」に縛られるのに慣れてしまうと、「従うべきルール」がなくなったときには大変な不安を感じるものですが、だからといって「新たなルール」を求めるのはやめましょう。ルールではカバーできない領域は必ず存在します。

  • 自分で考え、決断し、その結果を受け入れる

 ことを通じてしか、不安が解消されることはありえません。そのために必要なのが今回書いた3つのポイント、「肯定的なメッセージ」「制約のある自由」「同格のコミュニケーション」の3点です。願わくば、「若手を教える」立場にある人には、これらを踏まえて指導をされることを期待したいものです。

お知らせ1

 当連載でここまで扱ってきた「専門知識を教える技術」についての本が出版されました! 書名は『ITの専門知識を素人に教える技』(Amazon.co.jp)です。

お知らせ2

 8月22日(金)に、専門知識を教える集合研修の現場での「講師」としてのアクションに特化したセミナーを開催します。プレゼンテーションとは違う「専門知識を教える」ための問いかけ、間の取り方、言葉遣いといったティーチングのノウハウを、自ら考えながら身につけたい方はこの機会を逃さずご参加ください。

 「ITの専門知識を素人に教える技」出版記念セミナー(8/22) ご案内

筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『図解 大人の「説明力!」』


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ