その3 業界1位にどう対抗する?ビジネス力1分間トレーニング

業界第1位の自動車メーカーが発売した奇抜なデザインのスポーツカーが大人気――。中堅自動車メーカーの社長を務めるあなたは、この業界第1位にどう対抗しますか?

» 2008年08月12日 08時30分 公開
[西村克己,ITmedia]

Question

 業界第1位の自動車メーカーが、奇抜なデザインのスポーツカーを発売しました。極めて高級感もあり、大人気のようです。

 あなたは中堅自動車メーカーの社長です。他社のスポーツカーの成功は、うらやましい限りです。そこであなたもこのあたりで何か手を打とうと考えています。

 さてあなたは、業界第1位にどう対抗しますか?(複数回答可)

  1. スポーツカー市場に参入して高級ブランド化を目指す
  2. 自社の強みを活かした分野で別途製品開発を考える
  3. 販売代理店を再編成して販売チャネルを強化する
  4. 奇をてらうより思い切って合理化投資を積極的に行う

Answer

今回の問題は『戦略思考1分間トレーニング』の6問目から出題

 業界第1位のモノマネでは、業界第2位以下はとうてい歯が立ちません。全く売れないか、売れたとしても価格を下げないと売れないようです。同じ値段なら、消費者はブランド力があるトップメーカーの製品を買います。

 (1)のスポーツカーによる高級ブランド化は、中堅メーカーでは厳しいでしょう。(2)の自社の強みを活かした分野で製品開発を考えるのが常套手段です。また、(3)の販売チャネルの強化、(4)の合理化投資も手堅いでしょう。回答例は(2)(3)(4)です。

解説:差別化とオンリーワン

 他社のモノマネだと、価格競争に追い込まれます。同じ程度の商品なら、少しでも安いほうを顧客は選びます。かくして、限りない値下げ競争になります。他社のモノマネだと利益は出せません。まして業界トップと真っ向勝負しても、顧客から見向きもされません。

 かつて日本では、差別化がなくても、全ての企業が勝ち組になれた時代もあります。市場が継続的に拡大して、作れば売れた時代です。またかつての銀行のように、法規制で競争や新規参入が制限されていた時代です。しかし現在の規制緩和時代では通用しません。

 差別化で顧客に指名買いされる企業を目指さなければ、価格競争に追い込まれます。高くても買いたいと思える魅力ある企業や商品作りを目指すことが大切です。

 自社のコアコンピタンスを活かすことで、独自の競争力をつけることができます。差別化も大切ですが、他社が一切マネできないオンリーワンを目指すことが大切です。オンリーワンとは、質におけるナンバーワンです。

著者紹介 西村克己(にしむら・かつみ)

 岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT(技術経営)、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。

 主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』(日本実業出版社)、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』(中経出版)、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』(PHP研究所)、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』(東洋経済新報社)、『脳を鍛えるやさしいパズル』(成美出版)など、約60冊。



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