人手や資金の問題から、中小企業はBCP(事業継続計画)の策定に二の足を踏みがち。そんな中、BCP策定はもちろん、Webサイトを活用した安否確認システムを開発した企業がある。大同情報技術だ。その取り組みを見てみよう。
人手がない、資産的な余裕もない、何を参考にするべきか分からない――と、BCP(事業継続計画)の策定に二の足を踏んでいる中小企業の経営者も少なくないだろう。しかし、規模が小さいからこそ事前の準備をしておかなければ、いざという時、企業継続の道が断たれる。
BCP:「Business Continuity Plan」の略。「事業継続計画」のこと。
BCM:「Business Continuity Management」の略。「事業継続マネジメント」のこと。
テロや自然災害時など、予測できない災害などに見舞われた企業が、倒産に追い込まれることなく早期復旧するための行動計画(BCP)とそのマネジメント(BCM)。2001年の米国同時多発テロや、2004年の新潟県中越地震などを受け、企業の注目度が高まっている。
「まずは、できることから1つずつ」と、自らBCPを策定した大同情報技術。代表取締役である尼野邦貞さんに話を聞いた。
測量技術を核とした電子行政コンサルタント事業を展開する同社では、かねてより月に1回、従業員主催による危機管理に関する会議が行われている。機密情報漏えい防止規定などについて情報収集や意見交換したりする。
勉強会のようなフラットなスタイルの中、従業員の一人が「当社もBCM(事業継続マネジメント)の策定に取り組まなければいけないのではないか」と議題に乗せた。
「そこで危機管理の一環として取り組もうじゃないかということになったのです」と尼野さん。
そうして、経済産業省、内閣府、中小企業庁の出しているガイドラインを読んだ上で、「どうせなら自社の実態に合ったものを作ろう」と、ネットの情報や書籍なども参考にしながら、指針作りから規定まで、オリジナルで作成したという。
策定に当たって、尼野さんを悩ませたのは、「どこまでやるべきなのか」ということ。不測の事態、つまり予測ができないものに対して、どこまで対策として対応しなければいけないのか、どの時点でひとまず良しとすればいいのかということだった。「しかし、やれるところからやるしかないと結論付けて」策定に取り掛かったというのが現状だという。
最初に考えたのは、何から会社を守るかということ。「BCPは結果事象とはいうけれど、やはりある程度、想定してみないと具体的な対策を採るのは難しいと思います」と尼野さん。
そこで「会社として予想される危機的状況とその対策」として5つのテーマを挙げた。
危機的状況 | 対策 |
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1.会社が法的あるいは道義的に反社会行為を行って著しく信用失墜を招いた場合 | 社内倫理規定の徹底と教育 |
2.機密情報漏えいなど、人為的な事柄により著しく会社の 信用失墜を招いた場合 | 機密情報漏えい防止規定の徹底と教育 |
3.ハッカー・ウイルス等で社内システムに壊滅的ダメージを受けた場合 | 機密情報漏えい防止規定の徹底と教育およびバックアップ手法の確立 |
4.疫病、細菌兵器等により会社従業員に著しい損害を被った場合 | 技術継承手段マニュアル化の確立 |
5.地震災害やテロ活動により会社機能に著しい物理的損害を被った場合 | BCPの策定および日常的訓練の実施 |
このうち、5以外は、すでに着手済みだった。そのため5の対策、具体的には「地震、火災、約5キロ先の都庁に破壊的なテロ行為が起こされた場合」を主要なテーマとした。