アイデア手帳もアイデアも、1人ではいられない2009手帳マッピング(1/2 ページ)

ひらりと飛んできたアイデアの“花びら”をひょいとつかむ。そのアイデアを手帳に書きとめ、“押し花”のように手帳に閉じる。そんな1人で使う手帳のほか、みんなで使う“手帳”もあるのだ。そんな手帳たちを紹介しよう。

» 2008年09月17日 20時30分 公開
[郷好文,ITmedia]

 前回、アイデアを「毎日書かせる仕掛け」として、罫線や方眼のリズムをテーマにした。アイデアはヨコ罫線で走り、タテ罫線で整えられる。これが罫線が生むアイデア創出のリズム。そして、アイデア手帳にはもう1つ重要なリズムがある。「開けて閉める」だ。

 ひらりと飛んできたアイデアの“花びら”をひょいとつかむ。手帳を取り白紙のページを開く。最初の1文を書き留める。アイデアの広がるままに書き続ける。尽きるまで書いて、アイデアを“押し花”のように手帳に閉じる。開けて閉めるまでが心地よくないとアイデアはフッと消えてしまう。

 だからこそ手帳の表紙機能は、スナップやジッパー、ゴムバンドにマグネット、さらにとじひもと、開け閉めのパーツにこだわりたい。今回は、ゴムと磁石、そしてとじひもに注目してみよう。

ゴムと磁石ととじひもの手帳

 小さい頃から輪ゴムを飛ばしていた名残りゆえか、ゴムバンドと指の相性はとてもいい。MOLESKINEの手帳はバンドがポイントだ。バンドを引っぱり手帳を開く。書き終えてバンドをぐいっと引き、パチンと手帳にかける。ビヨン、パチンのリズムがとても手になじむ。バンドの開け閉めのアクションが手を楽しませてくれるわけだ。

MOLESKINEの「マンスリーノートブック」(1680円)

 Paperblanksの手帳は、美麗なカバーを磁石のバンドで開け閉めするのが大きな特徴だ。手にすると磁石の付きがおもしろくて、パタンパタンとつい手が遊びだす。

Paperblanksの「Black Moroccan」

 L'Aterier des Tuileries(ラトリエ・デ・チュイルリー)はとじひもを結んで、ほどいて。いちいちとじひもを結ぶ手間を要求される。合理性や迅速性を完全に無視しているけれど、白紙ページを埋めるのは、とじひもをほどきまた結ぶごとく、厳(おごそ)かなことなのである。



手帳“開け閉め”の哲学

 磁石もバンドもとじひもも、そもそも機能から考えると「カバンの中でページが開かない」「挟んだものが落ちない」ためにある。でもそんな機能だけなのだろうか? 機能や便利だけなら、もっとシンプルなスナップやジッパーで十分だしコストも安いはずだ。

 ふと子供のスポーツシューズを思い出した。今時ほとんどマジックテープで止める。脱ぎやすく履きやすいのが好まれるというわけだ。でもあえてくつひもの靴を履かせる親もいる。合理性よりも躾(しつけ)、靴の脱ぎ履きは「ひもを結び、ひもをほどく」という動作が大切だと考えてのことなのである。

 手帳の開閉リズムもこれに似ている。自分の手帳の世界にどう入り込むか? 自分の世界に入る“儀式”として手帳をどう開けるか。書いたり描いたりしたあと、どんなポーズで閉めるか。たとえば西部劇のガンマンが拳銃をくるくる回して革サックにサッと入れて「どうだい、オレ?」と呟く動作に似ている。あるいは化粧コンパクトを開いて、“自分じゃない自分”を演出して微笑む瞬間に似ている。

 バンド、磁石、とじひも――しおりやインデックスを含めて、開け閉めには深い美学がある。開け閉めの美学からの手帳選び――。面白く、興味が尽きない選択肢なのである。

自分の好きな“しおりチェーン”を使いたくて、元々あったとじひもにしおりを結びつけたCOATED DESIGN GRAPHICSの手帳マニア

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