落ち込んでいる人を無理に励ましたばかりに、「この人は分かってくれない」と信頼を失うことがあります。逆に「分かってくれてる」と思われたら――。テンションが合わない相手と、すぐ信頼関係が築ける簡単な方法を3回にわたり解説していきます。
例えばあなたの気分が落ち込んでいて、仕事にやる気が持てない時、上司から「自分の可能性を信じようよ。未来は夢にあふれているんだから」とか「情熱を持ってやっていこうよ」と言われると、どう感じるでしょう。「この人、何を言っているだろう?」と、心の距離を感じて引きませんか?
こんなふうに、落ち込んでいる人に対して「可能性に満ちている」「イキイキと充実している」といったポジティブな言葉をかけると、相手が引いてしまうことがあります。もちろん、こう言われて「そうですね!」と、いい反応を返してくれる人もいますが、そういう気分になれない人には、言えば言うほど「分かってくれない」「ついていけない」と感じさせてしまいます。
落ち込んでいる人には、「仕事はなかなかキツいよね」「プライベートもいろいろあるよね」「人生、なかなか思うようにはいかないよね」といった言葉をかける方が、心を開いてくれやすいものです。
以前、マッチング&リーディングについての話をしました。例えば、元気を出してもらいたい、いい方向にリードしていきたいということで、落ち込んでいる人に、「がんばれ! 絶対できるから。君にはいいところがあるじゃないか」と言っても、確かにその通りなんですが、相手が引いてしまって余計に落ち込ませることがあります。
そういう時は、まずマッチングをします。
相手と姿勢を合わせるミラリング、呼吸や口調を合わせるペーシング、相手の言葉を繰り返すバックトラッキングなどをしながら、相手と信頼関係(ラポール)を築きます。相手と波長が合ってきたら、少しずつ相手をいい方に引っ張っていきます。
ところがこの方法は、五感を研ぎ澄まして状況をよく把握していないと、なかなか難しいものです。具体的にどんなふうにするのか分からないこともあるでしょう。そういう時のために、今回は相手と簡単に信頼関係を築ける方法をご紹介します。
心理学的な面からいうと、人間は大きくは4つの意識状態にあるといわれています。
『幸せな小金持ちへの8つのステップ』などの著書で有名な本田健氏は、この4つの状態を、
(1)ネガティブ依存、(2)ネガティブ自立、(3)ポジティブ依存、(4)ポジティブ自立
と、心理カウンセラーの朝妻秀子氏は
(1)I am not OK,You are not OK.(2)I am OK,You are not OK.(3)I am not OK,You are OK.(4)I am OK,You are OK.
と、それぞれ表現しています。
彼らからヒントを得て、私はこの4つの状態を次のように表します。
(1)が最もネガティブな意識状態で、(4)に行くに連れて、だんだんとポジティブになります。そしてどんな人間でも、この4つの状態のどれかの状態にいるのです。もちろん、その時やっている仕事やプライベートの状況に応じて違ってきますし、ずっとそのレベルにいるわけではありません。話をする時は、相手の状態のレベルに合わせて話さないと、食い違ったままで信頼関係が築けません。
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