解説編 チームリーダーに必要なこと大口兄弟の伝説(2/2 ページ)

» 2009年01月21日 13時30分 公開
[森川滋之,ITmedia]
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3大リソースをコントロール

 続いて第2話の「そんなにまでしてつぶしたいのか?」の解説に移りましょう。

「そんなにまでしてつぶしたいのか?」

 「上位70位までの営業所で、95%の契約を取っていることが分かりました。人件費などを考慮すると、下位30位の営業所は廃止するほうが得策だという意見でまとまりました」

 田島の意見は冷たく、読者はあまり共感されないかと思います。しかし、こういう分析は非常に重要であり、リーダーたるもの、分析自体はみならっていただきたいと思います。

 ヒト・モノ・カネをビジネスの3大リソースといいます。人によっては、これに情報を加えて4大リソースといいますが、マネージャーやリーダーにとっては、まずは3大リソースをコントロールできるようにならなければなりません。

 そのためには、3大リソースをムダなところに使っていないかを常に厳しく見ておく必要があります。

 余談ですが、田島は筆者が一から作ったキャラクターであり、23階建ての本部ビルも私の想像に過ぎません。ですが、物語の主人公・吉田和人のモデルである吉見範一さんいわく、雰囲気そっくりとのことです(笑)。大企業の「偉いさん」って、どこも似てくるんでしょうか……。

波があるよりコンスタントに

「そんなにまでしてつぶしたいのか?」

 6月25日の時点で、月の目標本数に達したので、和人は全員に残りの契約は来月に回すように指示した。来月に備えて少しでも温存しておきたい。この程度の操作は、ほかの営業所でもやっているだろう。

 このこと自体の是非は別とします。読者にはずるいなあと思った方もいらっしゃるでしょうし、筆者もこういうことはあまり好きではありません。ただ、営業所存続という非常事態なので、なりふりかまってはいられないということで書きました。

 ただ、大企業などでは、利益が出すぎたときに来期に回すということを良くやります。これはなぜでしょうか? 一部上場企業が新聞などに、売上の下方修正を発表することがあります。下方修正ですので当然なのですが、たまに上方修正も発表しています。

 上方なのだから別にいいじゃないと思いがちですが、上場企業は計画通りに遂行するということが求められます。上方は上方で、予算策定時点で自社の実力を過小評価していたことになり、株式市場から見ると“悪い”こととされるのです。

 発表記事を見ると良く分かりますが、上方修正でも「円レートが当初予想より円安にふれ……」などと言いわけが載っているはずです。なので、期末に利益が多くなりすぎそうだと、上場企業は売上を来期に回したり、外注費を先払いしたりなどして調整します。決して法人税対策のためだけにやっているわけではありません。

 架空の売上や支払いを作るなどは言語道断ですが、法律に触れない範囲でこのような調整があること自体は知識として知っておいてください。大企業では、波がある人よりも、コンスタントに計画通りにできる人材のほうが尊ばれますのはこういうわけなんです。

「成約率を10倍にする名刺交換セミナー」のお知らせ

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  • 時間:18:30〜
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著者紹介 森川“突破口”滋之(もりかわ“とっぱこう”しげゆき)

 大学では日本中世史を専攻するが、これからはITの時代だと思い1987年大手システムインテグレーターに就職する。16年間で20以上のプロジェクトのリーダー及びマネージャーを歴任。営業企画部門を経て転職し、プロジェクトマネジメントツールのコンサル営業を経験。2005年にコンサルタントとして独立。2008年に株式会社ITブレークスルーを設立し、IT関係者を元気にするためのセミナーの自主開催など、IT人材の育成に取り組んでいる。

 2008年3月に技術評論社から『SEのための価値ある「仕事の設計」学』、7月には翔泳社から『ITの専門知識を素人に教える技』(共著)を上梓。冬には技術評論社から3冊目の書籍を発売する予定。


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