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» 2009年08月06日 13時24分 UPDATE

「ユニット式営業組織」のススメ:「書くのが苦手」な営業を救う「文書化ワーク分担作戦」 (1/2)

机の前に座って文章を書くのが好きだ、という方はそうそう多くはないことでしょう。まして営業ともなると、自社デスクで作業をしていたら「客先回ってこい!」と怒られることもあります。でもそれで本当にいいのでしょうか? 顧客事例を制作するのは誰の仕事ですか?

[吉見範一,Business Media 誠]

まだ1人で営業に行っているんですか? 〜2人で始める「ユニット式営業組織」のススメ〜

 ほとんどの会社で「営業」は単独行動が基本になっています。しかし著者はあるとき、2人で営業に行くほうが、はるかに契約を取りやすいことに気がつきました。それは決して偶然ではなく、現代の「営業」現場の持つ本質的な理由がそこにはあったのです。



 最近は歳のせいかエアコンを入れると妙に疲れやすくて扇風機が夏の恋人。そして窓は全開。あまり意識したことが無かったのですが、ふと気が付くとセミの声が聞こえてきます。「日本の夏っていいなあ」と子供の頃を思い出す。あの頃が懐かしい。

 と言いたいところですが今日は違う。「静けさや岩にしみいる蝉の声」なんて言ってられません。わたしの部屋の網戸に止まったアブラゼミがフルパワーで鳴きだしたんです。こいつには遠慮っちゅうもんがないんか! この音量は犯罪に近い。頭がジンジンしてきました。そんなわけでセミの声と戦いながらセミナーのコンテンツとも格闘しています。

 おかげさまでこのところ全国の商工会議所から講演のお声がかかるようになり、昨日は仙台、明日は山形という調子であちこち飛び回っている吉見です。この前は地方から東京のセミナーに参加された方が社内で有志を募ってポケットマネーで呼んでくださったこともありました。もう本当に感謝感激であります。

 それにしても今年ももう8月です。梅雨が明けたような明けないようなハッキリしない天気で、連日の猛暑、という感じではないにしても8月です。夏です。暑いですね。

 こんな暑い季節には外に出たくなくなりますよね。そこで冷房の効いたオフィスでじっくりと考え事をしながら書類を作っていると、「お前何ゴロゴロしてんだよ! 営業は客先回ってこい!」と怒られるのもよくあるパターンでしょう。でもね、これ、間違いなんですよ。もう根本的な間違いだと言っていいぐらいです。

 いけないのは「営業は営業マンが1人でやる仕事だと思っている」ことです。

営業は1人でできる仕事ではないのです

 この連載の初回にわたしがこんなことを書いたのをみなさん、覚えてますか?

  • 営業マンを個人で競わせ、管理することをやめる
  • 営業組織がチームで成果を挙げられるように、しくみを考える

 ごめんなさい、初回に書いたことなんて忘れますよね。でもこれが大事なんですよこれが。だから、何回でも言いますね。営業組織がチームで成果を挙げられるようにすること、これが大事なんです。

 営業、というとどうしても1人1人が売り上げノルマを持って競い合う一匹狼の群れというイメージがありますが、これも連載初回で書いたように、もうそれで売れる時代ではありません。「受注」を獲得するまでのいくつかのプロセスには、外回りをする営業マン向きではない仕事も入っています。

ts_unit1.jpg 図1.契約獲得のために必要な仕事は多種多彩

 図1に、契約獲得のために必要な仕事の一例をざっくり挙げておきましたが、なかなかこれを全部1人で「上手にこなす」のは難しいものです。単に「やってみる」だけならできるかもしれませんが、「できる」と「うまくできる」の間には深い深い溝があります。1人ですべてをやるのは無理なんです。

顧客事例を作っていなかった会社のお話

 ここで先日ご相談を受けたある会社の例をお話ししましょう。3週間ほど前のこと、わたしはあるIT製品の開発・販売をしているA社営業の田中さん(仮名)の話を聞いていました。

吉見 顧客事例は作ってるんですよね?

田中 いえ、それがないんですよ。

吉見 ないの? 導入事例作ってない?

田中 ええ、商品紹介のパンフレットはありますけど、既存顧客がどこも公開できないところばかりで、導入事例は作れてないんです。

吉見 それは困ったな……。

 これ、本当に困ったことなんです。導入事例あるいは顧客事例というのは、「試しにちょっと買ってみるか」と気軽に手を出すことが難しい商品の場合は特に重要です。にもかかわらずそれがないままで営業をしようとしているわけです。

 これは、営業マンの責任なんでしょうか? 違いますね。

 顧客事例というのは営業個人ではなく、会社が作らなければいけません。というのは、作るのが難しいからです。実は、事例制作だけを専門に請け負う会社もあるぐらい、「使い物になる」顧客事例の制作というのは難しい仕事なのです。それを営業マン個人におっかぶせて「売ってこい!」と尻を叩いても売れるわけはないのです。

 今回は顧客事例の作り方をテーマにしているわけではないので詳しくは語りませんが、事例を作るのが難しい理由はいくつもあります。今回はそのうちの1つだけ取り上げましょう。それは、

  • 事例制作のためには高度な文書化能力が必要である

 ということです。文書化能力!! ……なんて偉そうに言ってますがごめんなさい、実はわたし、吉見範一の一番苦手なのがこれなんですよ。困っちゃいますね。

「文書化能力」を分解するとどうなるの?

 何しろ苦手なのでこの件についてはちょっと助っ人を呼びました。わたしが何かと頼りにしている「教える技術」コンサルタントの開米瑞浩さんによると、文書化能力というのは例えばこういう能力だそうです。

  1. テーマに応じて素材を選択し、
  2. それが読者に伝わるシナリオを考えて、
  3. 適切な言葉と図表を使い、「文書」として表現する能力

 開米さんといろいろ話した結果を踏まえて吉見流にまとめると、こうなります。

 「テーマ」というのは、顧客事例の場合は「その商品を買うことによって得られる未来の新しい生活のイメージ」です。「楽になる」だったり「安心」だったり「面白い!」だったり、テーマを1つだけ決めます。そしてそれに応じて「素材」を選択するわけです。ここの「素材」は基本的に「顧客の生の発言」がベースでなければいけません。だから「顧客事例」が重要なんです。

 そして、「シナリオ」。

 実はこの「シナリオ」については、わたしがえーっと声を上げてしまうほど驚天動地、目からウロコが落ちるほどの衝撃を受けた事件がありました。

 それは今から1年半ほど前。ほかでもない開米さんに「吉見範一の営業セミナー」の構成を相談していたときのことです。要するにわたしが営業セミナーの講師を始めるにあたって、講師経験の豊富な開米さんにアドバイスを頼んだわけです。

 まずはわたしが自分でレジュメを作り、それを使って最初は自力でセミナーをやりました。

 それを見てもらった上で、数日後に改善案を打ち合せしたときのことです。

開米 吉見さん、このページですけど……。

吉見 これを?

開米 こんな風にしましょうか。

吉見 え、えーーっ?!!!

 そこには新しい案としてこんなページができていました。

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