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» 2011年08月11日 12時00分 UPDATE

節電DIY:エアコンの設定温度を上げると本当に節電できるのか (1/3)

一般家庭で夏の日中に最も電気を消費するのはエアコンだ。資源エネルギー庁では「設定温度を2度上げると10%の節電」だというが、本当だろうか。

[奥川浩彦,Business Media 誠]

 一般家庭で夏の日中に最も電気を消費するのはエアコンだ。その割合は推計で53%に達する。エアコンの消費電力は3割減らすことができれば、それだけで15%の節電を達成できたことになる。

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 この6〜7月筆者は毎日、テレビのEPGで「節電」を検索して録画、視聴した。多い日は数本の放送があるほど節電に関する話題にはことかかなかった。その中でエアコンの節電に関しては「設定温度を2度上げると10%の節電」だという。これは資源エネルギー庁が公表している数値で、1番よく流布している指標だ。エアコンメーカーのダイキンは1度上げると10%節電できると主張しているし、1度で数%という数値も目にすることがある。今回はこのあたりの数値の検証と実際のエアコンの節電について考えてみよう。

室温33度、消費電力は最大で1257ワット、最少で160ワット

st_sd02.jpg エアコンの下にワットチェッカー、温度計、時計を並べ録画記録した

 ニュース番組などで「設定温度を2度上げると10%の節電、残り5%で15%達成」と主張するケースがあるが、普通に解釈すればエアコン単体で10%の節電=53%の10%で5.3%、残りまだ10%ほどを他の方法で節電する必要がありそうだ。とは言え最も比率の高いエアコンの節電は、日本全体の夏の課題と言えよう。

 最初の検証は6月末の猛暑日に行った。外気温36度、室温33度の日にエアコンの温度設定を変更しながら消費電力の変化をチェックした。消費電力の最大は1257ワット、最少は160ワット。室温と設定温度の差によって消費電力は大きく変化するのは予想通りだが、その動作は予想外に複雑で、設定温度を2度上げたら10%の節電というような単純な結果を導き出すことは不可能だと思った。

 しかし、この検証である程度エアコン動作を理解したので、2度目の検証は梅雨明け後、外気温32度、室温31度の日にエアコンの設定温度を29度と27度で比較してみた。計測した項目は消費電力、外気温、エアコン吹き出し口の温度、室温の4項目。室温はレイアウトの都合上エアコンの真下、床から高さ1メートルくらいの温度を測定している。

 29度に設定した下のグラフを見てみよう。紫色の線がベランダで測定した外気温。測定中32度くらいで推移している。緑色の線が室温で測定開始時は31度、青色の線がエアコンの設定温度。29度なので室温を2度下げることになる。黄色の線はエアコンの吹き出し口の温度、赤色の線は消費電力で右側のスケールがワットとなっている。

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 エアコンをオンにすると170ワットくらいで5分ほど様子見をしている感じだ。吹き出し口の温度を見ると2分くらいは送風で3分ほどして下がり始める。消費電力はステップを踏みながら上昇していく。200ワット、220ワット、240ワット、300ワットと2〜3分一定の出力で様子を見て徐々に強くなっていくイメージだ。ピークとなる548ワットに達したのは開始から34分後、この時の室温は30度、吹き出し口の温度は17.2度まで下がった。ちなみにエアコン本体の温度表示のランプは出力がピークに達する3分ほど前に29度を示していた。

 ここから消費電力は徐々に減り、吹き出し口の温度もゆるやかに上昇する。室温はその後も徐々に下がり、開始から47分で29度に達し28.5度くらいで安定した。消費電力はピークから25分かけてボトムとなる145ワットまで下がり開始から1時間ほどで160ワットあたりで安定状態となった。

 ここでいったん測定を終了。ドライの消費電力、エアコン再起動時の消費電力を測定して電源を切った。続いて20分ほど窓を開け、室温を元の状態に戻して次の測定を開始した。

設定温度を2度下げると……

 今度はエアコンの設定温度は27度。外気温32度、室温31度とほぼ同じ条件での測定となった。グラフを見てみよう。縦軸のスケールは先ほどと同じだが、横軸は1時間5分が2時間となっている。

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 室温と設定温度の差が4度になるとエアコンも頑張り方が違うようだ。開始から消費電力はガンガン増え2分後に930ワットに達する。5分ほど一定の状態があり開始7分で1130ワットとなった。吹き出し口の温度は1分を過ぎた頃から下がり初め5分後で17度、先ほどの34分と比べると頑張りの差は明らかだ。吹き出し口の温度はその後も下がり11〜12度で推移した。

 室温は開始19分で29度、43分で27度に達しその後26度付近で安定状態となった。消費電力は1時間ほど1000ワット以上で推移し660ワットくらいに急降下、30分ほど一定の状態の後、今度はゆっくり降下して開始から1時間45分ほどして300ワットくらいで安定状態となった。11〜12度だった吹き出し口の温度も消費電力が300ワットになると16度くらいに上昇した。

 累積の消費電力量は29度設定で0.35キロワットアワー(1時間5分)、27度設定で1.59キロワットアワー(2時間)となった。1時間に換算して比較すると29度で323ワットアワー、27度で795ワットアワーと約60%の削減となった。安定状態は29度で160ワット、27度で310ワットなので比較すると約50%の削減。安定状態がずっと続くという仮定で6時間使用した場合は、29度で1.15キロワットアワー、27度で2.83キロワットアワーとなり約60%の削減という計算となる。

冷房とドライの電力差

 冷房とドライの電力差も測定したので紹介しよう。29度設定し160ワットの安定状態に入ったところでドライに切り替えると、消費電力は206ワットに上昇した。この条件の場合はドライよりも冷房の方が消費電力は少なくなっている。

状態 ワット
29度設定で1時間経過した安定状態 160ワット
上記の状態でドライに切替 206ワット

 冷房中の送風は弱と強で10ワット程度の差でエアコン全体の消費電力からするとそれほど大きな差はない。音のうるささを無視すれば弱よりは強にした方が温度ムラも減るし、風により涼しく感じる場合もある。自動に設定すれば最初は強で動作し、安定状態になると弱に切り替わる。

気温によっては設定温度を上げても節電にならないことも

 エアコンはこまめに切るより動かし続けた方が省エネと言われるので、これも少しだけ検証してみた。29度設定→ドライの後5分ほど停止し再度29度設定でオンにしてみた。この時の室温は28.8度で設定温度を維持している状態だった。この条件で開始2分で170ワット、その後微増して十数分で230ワットくらい安定状態となった。このデータではオン、オフを繰り返すより動かし続けた方が消費電力は少なくなりそうだが、オフにする時間の長さや設定温度によって変化するので実際には使用条件で異なってくるだろう。

 今回測定を行った部屋はリビング・ダイニングで約12畳+カウンターキッチンの3.4畳が同じ空間だ。筆者宅のエアコンはマンション購入時に設置した96年製。使用頻度が年に数回なので買い替えせずに使い続けている。部屋の大きさやエアコンの新しさで異なる結果になるはずだが、ある程度は参考になると思う。

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