インタビュー
» 2013年09月27日 08時20分 UPDATE

時代の変化に合った働き方:上場は考えず、非正規雇用全廃。牧場経営へ――異端のIT企業家、リンク岡田元治社長に聞く (1/3)

株式は公開しない。正規雇用を守る。リンクの岡田社長は「当たり前のことをやれば、自然かつシンプルに『やるべきこと』が見えて来る」と話す。

[Business Media 誠]

 1987年に広告制作会社として設立したリンクは、96年開始のレンタルサーバ事業に軸足を置きながら、インターネットモール、コールセンターソリューションへと事業領域を拡大してきた。そして、2010年に酪農事業に進出し注目を集めている。一見、関連性が薄いかにも見える、ITと酪農。しかし、そこには岡田氏の企業と社会の未来への思いが込められていた。

――雇用の流動性確保が言いはやされていた中、非正規雇用を早くから全廃されていたのは独特な取り組みでした。技術トレンドの移り変わりの激しいIT業界では尚更なのですが、なぜ当時50人規模だった社員を2002年から全員正社員としたのでしょうか?

shk_link03.jpg リンクの岡田社長

岡田  誤解されやすいところでもあるのですが、全員の正社員雇用も、年金受給開始年齢までの雇用を約束する変動定年制も、累進子ども手当も、福利的な視点だけで実施しているわけではありません。社員は会社にとって最も重要なエンジンです。そこを“借りもの”でまかなうのは間違っていると思います。

 日本企業は、会社と社員がお互いを支え合っている関係を地道に築きあげてきました。でも、契約満了です、と言われて首がすげ替えられると分かっていたら、社員に当事者意識が生まれるでしょうか。社員による情報漏洩などの問題はそういうところにも起因していると思います。

 ただ、そういう制度を用意したことで諦めた部分もあります。社員の定着率を高めると、ITや金融のように変化の激しい業界では遅れをとることがあるのは事実です。でも、会社はいわゆる“勝つ”ためだけに存在するのではない。個人や家庭の支持基盤として社会の重要な構成要素である会社をきっちり存続させることが、会社の基本条件だという考え方もあっていいのではないでしょうか。

――2010年に酪農に参入されたことも驚きを呼びました。

  どこの国もそうだと思うのですが、農業はその国の食糧安全保障を担っているだけでなく、保水や治水という意味で山林・河川といった国土そのものも守っているわけです。50歳を過ぎていろんなことを知ってしまい、いずれはこの国の農業と命を守る側の仕事をしないと考えていました。そんなときに、事業の多角化の一環として先に始めていたオンラインモールで、中洞牧場を知ってしまった。

shk_link01.jpg 山の中で草を食む牛たち。牧場は農薬とも肥料とも無縁で、「太陽と月と雨の恵み」(岡田氏)という

 最初はモールに4本3000円の牛乳を並べるだけでした。しかしある機会に、牧場主の中洞さんと話をして牛を草地ではなく山に放牧する「山地(やまち)酪農」の現場を見て、「これは素晴らしい農業だ。残さないといけないし、拡げないといけない」と思ったわけです。その後、いろんな事情が重なって牧場の支援を決め、企業農業研究所を立ち上げました。翌年には震災と放射能の風評被害もあり大変でしたが。

 中洞牧場との出会いはそのころに考え始めていた、社員の雇用をどうやって維持するかという問題ともリンクしました。ITであろうが建設であろうが何だろうが、企業も人も必ず老いるわけです。想定外の長寿社会が現出してしまった結果、1942年に戦費の調達を目的として始まった年金制度も、約束された通りのものではあり得ない。

 地域社会が残っていて農作業とかもある地方とは違い、都会のお年寄りにはやらなければいけないことが少ない。生活費も不足しがち。我が身の問題として想像したら分かると思いますが、これは本当に不幸なことです。日々のニュースでも分かるように「お金がない」「朝起きてやるべきことがない」って、犯罪や病の源泉ですからね。

 401kとか早期退職制度なんかが用意できる大企業ならまだいい。でも日本のほとんどの企業はそんな余裕はない。年をとった社員ばっかりのIT企業なんて会社も顧客も不幸でしょう(笑)。

 だから、先ほど「お互いを背負い合う」関係と言いましたが、会社のために頑張って働いて年をとった社員に、選択肢としての「現場」を用意しようと考えたのです。

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