つい調べたくなる新メンバーの人となり、人づてに聴くとこんなリスクが田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年10月10日 11時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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社内でメンバーの予備知識を仕入れすぎると……

 ただ、社内の場合は注意したほうがよい。

 例えば組織変更があり、上司が替わることになった場合には、その上司の元で働いたことがある同僚に尋ねることもあるだろう。「どんな人柄のマネージャ? どんな特徴があるの?」と。逆もある。新しいチームを任されることになったマネージャが、前任者から引き継ぐ際、仕事についてだけではなく、メンバーについても聴いておく。「○○さんはこういう人、××さんはこういう人」「彼はこれが強みで、ここは弱み」「彼女は、こういうことは得意だけれど、こういう仕事はどちらかと言うと苦手」……。このように細かく尋ねてしまう。実はこれ、あまり得策ではないような気がしている。

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 いいことならともかく、悪いことも含めて耳に入れてしまうことで、それが先入観になってしまう。まだ会ったことのない相手について何らかの“固定したイメージ”を持ってしまうのだ。

 例えば、ある新任リーダーが前任者からこう教えられたとしよう。

 「山田さんは、ルーチンワーク的な決まりきった仕事はあまり得意ではなく、提出書類にはミスが多い。その代わり、創造的なことには独創的なアイデアを次々と出してくるので、新しいことに挑戦するには彼をチームに入れておくといいよ」

 こういう予備知識を持った新任リーダーは、その先入観に沿って相手を見てしまうようになる。

 だから、「きれいで丁寧な提案書を作る必要がある」というとき、『山田さんは、こういうの苦手だろうなあ。書類作りでは、鈴木さんのほうが上手だと言われていたし、鈴木さんにやってもらおうか』と考えてしまうこともありうる。

 そうやって、自分の目で確かめてもいないうちに、リーダーから見た「山田さん像」が徐々に固まっていく。もしかすると、前任者の目にはルーチンワークが苦手に見えただけで、やり方次第では、十分な成果が出せる人なのかもしれないのに、どうしても色眼鏡で見てしまうのだ。

 前任者から詳細に聴いた「引き継ぎ情報」が、こうして“人間関係の邪魔”をしてしまうのである。

 「あの人はこういう人だ」という前評判は、多少なら会う前の心づもりをするのに役立つが、あまりに詳細に伝えてしまうと、不要な先入観を相手に植え付けてしまう元となる。

 人は「自分が思っていることを証明しやすい情報」を集める傾向がある。先入観があると、ついつい、その先入観を“証明する”部分だけをピックアップしてしまう。よい評価についてはそれでも問題ないが、よくない評価の場合は、その先入観が相手を実際の姿以上にネガティブに捉えることとなりかねない。だから、できるだけ「曇りない自分自身の目」でひとりひとりと対峙し、相手との関係の中から徐々に理解を深めるようにしたいものだ。

 知り合いに、誰かを紹介する際、かならず「よい点」を伝える人がいる。「彼は、こういうところがすごいんだよ」「彼女はこんなところが素晴らしいんだよ」。事前に教えてくれるとしたらこの程度の情報だ。会う前からワクワクしてくる。そして、その前提で会うので、第一印象がよりよくなる。もし前もって耳に入れておくなら、よい点だけを伝えておくほうが双方ともにハッピーになれる。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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