「言っても無駄」では、何も変わらない――話す相手を間違えていませんか田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年10月31日 11時00分 公開
[田中淳子Business Media 誠]
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 もちろん、「これまでも何度も言ってみたけれど、改善されない」「上司が理解してくれないからもう諦めた」というケースもあるかもしれない。

 「学習性無力感」という言葉がある。

 自分が無力である経験を繰り返すうちに「無力」であることを「学習」し、自ら状況を変える行動を起こさなくなってしまうようなことを指す。

 上司にたびたび伝えたものの、理解してもらえない。状況を変えられない。だったらもういいや、と諦める。だから「言っても無駄」と思ってしまっているということは考えられる。

 ただ、まだ何も言ってもいないうちから諦めているケースもある。

 「これまでに言ってみました?」

 「いいえ、一度も」

 あるいは、

 「2回くらい言ったけど、無理だったんで。」

 「この件で、ですか?」

 「いや、別件ですけど。どうせ分かってくれないと思って」

 などと、「諦める」のが意外に早い。

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 言わない理由はあるだろう。

  • 言って、否定されたらどうしよう? という不安
  • 「当人に言ってみたらいいじゃない」と背中を押してもらいたい
  • 言わなくても分かってくれたらいいのになあ、という淡い期待

 「不安」はよく分かる。力関係がある相手に物を言うのは勇気の要ることだからだ。

 「背中を押してもらいたい」のも理解できる。勇気を得られれば、一歩先に進みやすくなる。

 「分かってもらいたい期待」だとしたら、叶うのはかなり難しいのではないか。

 “伝えていない期待”を周囲に気づいてもらえることは、かなりまれだ。以心伝心なんてことはまずない。

 期待があるならば、やはり「私はこうしたい」「私はこう思う」と表現してみるに越したことはない。

 例えば食事に行って、自分が頼んだものがなかなか出てこない時に、「このお店、どうなっちゃっているのかしら? 12時半までに出してくれるのかな?」と連れには言うけれど、お店の人には言わない。

 打ち合わせ中、隣の同僚には「ねえ、スクリーンの文字が小さくて見えないよね」と小声で言うけれど、プレゼンターには何も言わない。

 今自分が抱えている問題を解決したい。物事を先に進めたい。自分の状況を変えたい――。そう思うなら、「言うべき相手」「適切な相手」に向けて行動するしかない。

 「12時半までにお料理を出してもらえますか?」と給仕担当者に直接伝える。

 「スクリーンの文字を拡大してもらえますか?」とプレゼンターに依頼する。

 言ってみたら、案外、「あ、そうですよね」とか「ごめんなさい」とすんなり相手が対応してくれることも多いはず。

 自分を取り巻く環境に働きかけられるのは、自分なのである。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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