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» 2014年02月20日 11時00分 UPDATE

ボクの不安が「働く力」に変わるとき:なぜ上司は退職に追い込まれたのか――コーチングで起きた悲劇 (1/2)

知人の会社で、上司が急に退職することになりました。理由を聞くと、どうやら会社が導入したコーチングプログラムが原因のよう。社員の能力開発を促す評価法を導入したはずが、なぜでしょう……?

[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),Business Media 誠]

竹内義晴(たけうち ・よしはる)

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 1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。

 自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。

 米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(ベストブック)がある。

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 先日、居酒屋で知人のビジネスパーソンとお酒を楽しんでいたときのことです。仕事の話題になったとき、知人は、次のように話し始めました。

 「実は、今度私の上司が退職することになったんですよ。うちの会社では昨年からあるコーチングを提供している会社と契約して、上層部がトレーニングを受けるようになったんです。その中で“360度フィードバック”というのをやったんですが、どうやら、それが会社を辞めるきっかけになったらしくて……」

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なぜ上司は退職に追い込まれたのか

 360度フィードバック法(多面的評価法)とは、これまでのような上司が部下を一方向に評価するだけではなく、上司、同僚、部下といった、あらゆる角度から評価することで社員の能力開発を促す評価法です。

 「そうはいっても、360度フィードバックって単なる評価ツールだろう? それなのに何が社員を、それも上層部である上司を、会社を辞めざるを得なくなるまで追い込んでしまったんだろう?」

 知人からさらに詳しく話を聞くと、どうやら次のようなやりとりがあったそうなのです。

  • 人材育成の一環で上層部にコーチングが導入された
  • コーチングの目的は「組織に前向きな変化を起こすために上層部が外部のコーチからコーチングを受け、その効果を上司自らが感じ、部下にもコーチングを行うことで、組織内にポジティブな変化を起こす」こと
  • コーチングの一環で、上司のリーダーシップや気配りに関するアンケート(360度フィードバック)を実施
  • 上司に部下からの声が届く
  • 上司は自身のリーダーシップのなさ、部下からの信頼のなさを痛感
  • フィードバックをもとにコーチングを受けるも、「あなたは部下からこう見られているんです」と責められるようなコーチングに上司は逃げ場がなくなり、肉体的・精神的に不調を招き、退職

 私たちは自分のことを客観的に見ることはなかなかできません。さまざまな立場の人からのフィードバックは人の成長にとても大切です。しかし、フィードバックが「よりよくなる」「役に立つ」ものならいいのですが、退職まで追い込むものなら、ハッキリ言って意味がありませんし、「コーチングって何なのだろう?」と疑問を呈したくもなります。

一体何のためのコーチングだったんだろう?

 ビールを飲みながら、知人はこう続けました。

 「上司の退職の話を最初に聞いたとき、一体何のためのコーチングだったんだろうと感じました。相手のモチベーションを高めてポジティブな気持ちに持っていくのがコーチの役割のはずなのに、なんで体調に支障をきたすほどネガティブにさせてしまったんだろう……と思ったんです。コーチングによって体のバランスを崩してしまった上司に同情しました。

 アンケートは、配慮ができるオトナな人たちが集まるグループなら意義のある意見が集まると思います。しかし、文句は言うけれど自分からは何もやらないタイプの人たちが多いと、アンケートを取れば取るほど不満の嵐が収まらなくなってしまうかもしれないなあ……と感じています。特に今回は、外部のコーチという第三者が介在していたので、上司は逃げたくても逃げられず、そのストレスが心身をむしばんでいったんじゃないか、なんて思ったりしています」

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