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» 2015年03月06日 05時00分 UPDATE

表現のプロが教えるスピーチの兵法:話の内容と五感を結びつけると、忘れられないスピーチになる (1/2)

聞き手の印象に残るようなスピーチは、内容を磨き上げることはもちろん重要ですが、さらなる工夫も考えてみましょう。感覚に訴えると効果てきめんです。今回は、そのノウハウを伝授します。

[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「表現のプロが教えるスピーチの兵法」から一部抜粋・編集して掲載しています。


 3月から4月にかけての時期は、出会いと別れのシーズンです。読者のみなさんも、送別会や歓迎会などでスピーチをする機会もあるでしょう。

 私には、この季節になると必ず思い出すスピーチがあります。私がNHKに在職していたとき、退職する女性スタッフに対して送った上司(アナウンサー)のスピーチです。

 「退職する女性の話ではなくて、いきなり花の話なの?」と、その場の誰もが困惑した表情を浮かべつつも、次第に惹きつけられていきました。

 話のアウトラインは、以下のとおりです。

 その上司の好きな花は沈丁花(ジンチョウゲ)。早春に紅紫色または白色の花を咲かせる常緑低木です。この花は甘く女性らしい香りが特徴で、沈丁花という名前も香木の沈香(ジンコウ)のようなよい匂いがあり、スパイスである丁子(チョウジ)に似ている、という意味でつけられたそうです。

 退職していく女性は、この沈丁花の香りが似合うような、とても可愛らしい女性でした。

 一方、その仕事ぶりは、見た目に反してバイタリティに富んだもので、現場にどんどん出て行く行動派でした。

 上司は彼女の行動力を称えながら、「今度から春先に沈丁花を見たときは、○○さんを思い出すことでしょう。今後ますますのご活躍をお祈りいたします」とまとめました。

 そのスピーチを聞いて以来、春先にどこからともなく沈丁花の甘い香りが漂ってきたときは、退職した女性の顔と名前、そして上司のスピーチを思い出しすのです。

五感に訴えると印象に残りやすい

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 このスピーチが優れているのは、聞き手の五感に訴えている点です。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感と話の内容を結びつけることができたら、聞き手にとって忘れられないスピーチとなります。沈丁花のスピーチは、通常いつもスイッチが入っている視覚、聴覚だけではなく、ついつい鈍感になりがちな嗅覚を取り上げている点が絶妙です。

 さらに、1年中感じられる香りではなく、スピーチをしたその時期にだけ香るという季節感が加わって、オリジナリティの高い内容になっています。そのため、主役であった退職する彼女のことを忘れないのはもちろん、スピーチをした上司のことも私の記憶に刻み込まれました。話の内容と話し手の両方の印象を残した好例です。

 みなさんも、聞き手が忘れないようなスピーチをしたいと思ったら、話の内容と五感を絡めることができないか検討してください。

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