「事業計画をつくれ」と社長に言われたら頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた(1/2 ページ)

「適当にやっておいて」と言われるのは困ったものですが、経理は時にそうした“ムチャ振り”をされる立場です。今回は、あいまいな要請のさばき方を考えます。

» 2015年03月10日 05時00分 公開
[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた」から一部抜粋・編集して掲載しています。


 中小企業の経理担当者は、「銀行から事業計画がほしいと言われたから適当につくっておいて」などと社長からムチャ振りをされることがあります。

 「適当につくっておいてと言われて困ってしまいました。どうしたらいいですか?」と、経理担当者から(顧問税理士である)私に振られることもよくあります。

社長の意図を把握する

 まずは、どこまで適当にするのか加減についての確認です。社長の言った「適当」が、「自分の考えにうまくあてはまった事業計画をつくってほしい」のか、「よく分からないから、銀行からお金を借りられるぐらいの計画を見繕っておいてほしい」という意味なのかを確認します。

 多くのケースでは、後者の「銀行からお金を借りられるぐらいの計画」が求められています。

 社長からすれば、銀行からお金を借りるという目的が達成できればよいので、その目的にかなう計画であれば、数字は多少自分の考えと違っても構わないようです。

 頼られる経理となるためには、こうしたときに期待に応えないといけません。経理担当者が事業計画を作成するときには、現状がそのまま続いていくという予測をもとにする場合が多いです。

 例えば直近半年分の実績PLを2倍して1年分に換算します。年換算をした数字は、今期の数字のベースとして、それ以降は会社の最近の成長ペースに合わせて、1年ごとに「今期の数字+○%」を予測値とします。資金繰り表も予測PLをもとに作成します。

 そして借入希望額と返済プランを資金繰りに織り込んで、返済計画に問題がないことを確認したうえで社長に手渡します。

 社長はでき上がった事業計画の数字が+○%となっていることを確認して、銀行に提出して融資担当者との面談に備えます。

 そして融資が決まったら、社長はその事業計画を二度と見ることはないでしょう。銀行からお金を借りることができればよいので、目的を達成したら、その事業計画とはオサラバということです。

 事業計画をつくった経理担当者としても、社長がそんな感じであれば、作成した事業計画のことなどしばらくすると忘れてしまうと思います。

 社長が事業計画の中身にあまり興味がないようだったり、銀行への提出期限まで時間がないような場合には、私も同じような感じで作成します。

社長のアタマの中のイメージ

 さて、私が事業計画を作成するときに、1つだけ注意しているポイントがあります。それは、「適当に」と言われても経理側の想像だけで進めないことです。

 今期実績と比較して数字の上積みをどのくらいにするか、必ず確認します。

 そのほか、人を増やす必要があるかどうかなど、損益に大きく影響を及ぼす項目(数字が大きい科目のなかから3つぐらい)について、変動する要因があるかを確認します。

 また、借入で調達した資金の使い道(運転資金なのか設備資金なのか)を聞きます。最低限の重要な項目は落とさないように聞き取ったうえで、事業計画に項目を落とし込みます。

 単純に実績値+○%で作成をしたときと、ヒアリングを進めて作成した結果はあまり変わらないことが多いのですが、「社長に聞き取りを行って計画をつくった」という点がポイントになります。

 「経理が勝手につくったものではなく、社長のアタマの中のイメージを計画に落とし込みました」という姿勢を示すことが大事です。社長も自分が口にしたことが事業計画に落とし込まれていると、多少なりともでき上がりに興味をもつようになります。

 そして、せっかくつくった事業計画なのですから、実績値との比較をするために積極的に活用しましょう。

 まだこの段階では、計画値と実績値の差が生じた場合に、見落としていた変動項目がないかを確認する程度で十分です。見落としていた変動項目があれば、次回の計画を立てるとき漏らさないように留意します。

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