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» 2015年07月31日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:「交通政策白書」が示す地方交通の現状と将来 (1/4)

「交通政策白書」に目を通した感想は「地方鉄道は厳しい」だった。国の責任で国民の移動手段を確保するにあたって、やはり地方鉄道はコストがかかりすぎるのだろう。白書は国の方針として「地方はバス」と宣言しているようにみえる。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 2015年6月9日、我が国初の「交通政策白書」が閣議決定され、国会に報告された。この白書は2013年11月に制定された「交通政策基本法」に基づいてまとめられた。内容は2014年度の交通の現状と、2015年度の交通施策の概要だ。

「平成27年度版 交通政策白書」 「平成27年度版 交通政策白書」

 交通政策基本法の理念は第一に「国民の移動について最低限の需要を満たす」である。その上で「豊かな国民生活の実現」、「国際競争力の強化」、「地域の活力の向上」、「大規模災害への対応」をめざした施策を行う。国が国民の交通手段に対する考え方を示し、関与していくための法律だ。

 日本の交通事業は、国が空港や港湾、道路などの基盤を整備し、交通サービスは民間企業が主体であった。民間事業は利益を目的とするため、すべての国民や地域が満足な公共交通サービスを得られるわけではない。そこで、交通が不便な地域については、地方自治体が交通事業を実施したり、交通事業者に対して補助金を拠出している。

 過去には地方自治体の財源として交通事業を手掛けた事例もあるとはいえ、大都市への人口集中と過疎化の進行によって利用客が減少傾向だ。公共交通は儲からない。そうなると、民間企業も地方自治体も交通事業を維持できなくなる。そこで、国が基本理念を示し、国民の移動する権利を保障しよう、となったわけだ。

 交通政策白書は、交通政策基本法の理念を実現するために、国民の交通手段の現状を報告し、今後の交通政策を提案する内容となっている。体裁はA4判で4部構成、資料編も含めて230ページもある。そのすべてが国土交通省のWebサイトで公開された。今回はこの白書から地方交通に関する部分を拾い読みしたい。

第I部 地方鉄道の危機的状況が見える

 第I部は「平成26(2014)年度交通の動向」と題して、鉄道・自動車・船舶・航空のそれぞれについて、旅客と貨物の両面から報告されている。統計データの図表と解説という構成で、日本の交通について、2014年度に至るまでの推移データが網羅された。日本の交通問題を論じるときに、最初にあたるべき資料になっていると思う。

 総論では日本の人口減少の予測図がある。

 人口が減れば、当然ながら交通需要は減る。減少傾向は地方が顕著だ。そして高齢化は進む。高齢人口は2025年にピークを迎え、都市部で顕著になる。人口総数は減っていくけれど、クルマを運転できない交通弱者は増える。つまり、短期的に公共交通の需要は増えそうだ。しかしその需要に合わせてインフラを増やすと、2025年以降は余剰になるかもしれない。

2060年までに総人口は7割以下に。高齢者は約2倍に(出典:平成27年度版 交通政策白書) 2060年までに総人口は7割以下に。高齢者は約2倍に(出典:平成27年度版 交通政策白書)
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