第III部は「平成26(2014)年度交通に関して講じた施策」、第IV部は「平成27(2015)年度交通に関して講じようとする施策」で、どちらも陸海空の交通事業全般にわたり、新しい交通システム技術やバリアフリー、人材育成など広範囲にわたる。ただし、どちらも地方交通の再生をトップに掲げており、この問題の重要性を示している。内容については第II部の事例の根拠となる法整備や仕組み作りである。
交通政策白書を一通り読んでおくと、最近の地方鉄道に関するニュースも理解しやすい。例えば、北近畿タンゴ鉄道とWILLER TRAINSの取り組みはまさにコンパクト・プラス・ネットワークの具現化だし、JR北海道が多数の無人駅を廃止しつつ、宗谷本線そのものの廃止に言及しない理由も「鉄道には都市間の輸送という大役がある」「ただし中間駅は地域交通の問題」と切り分けた結果だと言える。JR東日本が気仙沼線と大船渡線のBRTを継続し、鉄道の復活はしないという方針だ。これも国の方針に沿った処置と言える。
地方交通において交通政策白書が掲げたコンパクト・プラス・ネットワークに沿うならば、地方鉄道の役割はかなり限定的だ。鉄道は大都市、または大都市間の交通手段のもの。そこは国としても支援していくだろう。しかし、地方でどうしても鉄道を残したいなら「国の方針とは異なるから支援できない。自治体や交通事業者で解決しなさい」と言われそうだ。
そうなると、JR北海道だけではなく、ほかのJR会社についても地方路線については撤退、あるいはBRTへの転換が進みそうだ。例えば、JR東海の名松線は大雨被害で不通となり、JR東海がバス転換を提案。自治体の働きかけで鉄道の復旧整備が進められている。しかし、国の方針が固まったからには、今後、同様の事例で鉄道が復活することはないだろう。
地方に住む人の交通を維持する手段として、鉄道である必要はない。BRTでもデマンドバスでも、もっと便利な方法があればそちらを選択すべきだ。鉄道好きとしては寂しいけれど、地方交通の変革はもう始まってしまった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング