某ベストセラー就活本では何年か前まで、面接最後に聞かれる「何か質問はありますか?」への例として、「自分の面接のできや評価を聞いてはどうか」というものがありましたが、これは論外な質問だと私はあちこちで批判していたのですが、いつの間にかなくなっています。冒頭で書いたように就活は、企業にとっては採用という事業活動です。学生の評価のための試験でも、説教していい気になるためのものでもありません。
本来の採用や面接の意味が分からず面接官を務める人がいるのも事実ですが、よくよく考えてみれば、大企業であっても人事の専門家などごくごく限られた人に過ぎません。人事関係以外の人は、例えば営業の大ベテランであっても採用面接においては素人である可能性のほうが高いのです。つまり素人が面接に関わる可能性があることが、絶対的な正解も、客観的採用理由も存在しない正体なのです。
もちろん採用は面接官1人が決定するものではありませんから、仮に面接に加わっていなくとも、結果の報告から実態を読み取り、採否を確定する際には専門家の人事が当然関わって、整合性を取ることでしょう。ただ、それでも雰囲気やセンス、清潔感などの数値化できない要素が影響するのが人間です。その人間で構成される「組織」こそが企業です。
就職するというのはペーパーテストで正解を出すのと全く別で、そのような理不尽さを含んで業務遂行できることが評価につながるといえます。絶対的正解や、不採用理由などを追いかけて汲々とすることは何も意味をなしません。ビジネス、組織の理不尽さを受け止められる人は、採用も入社後の活躍も期待できるといえるでしょう。(増沢隆太)
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