「なぜ今、宇宙に“張る”のか」 日本の著名投資家が語る宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)

» 2015年11月20日 12時55分 公開

10年前でもなく、10年後でもなく、今が投資のタイミング

 TomyK代表の鎌田氏はロボット、人工知能、宇宙、ゲノムなど、技術ベンチャーの立ち上げをエンジェル投資と経営支援の両面から支えている。宇宙分野では超小型衛星のアクセルスペースに投資を行っている。

 投資領域を「直近は、地球観測と衛星インターネット。特に衛星インターネットは新興国におけるネット需要や人が行かない地域のIoT(Internet of Things)需要がある。次に宇宙旅行などがあり、最も遠いのが火星移住や資源探査とみている」と鎌田氏は見立てる。

 また同氏は、「技術ベンチャーが成功するには、技術が進化する歴史上のあるタイミングがある。PCでMicrosoftやIntelが出てきたタイミングも、ネットでGoogleが出てきたタイミングも、10年前でもなく10年後でもなく、あのタイミングだった。宇宙も10年前であれば部品もそろっていなく、打ち上げも民間ではできなかった。今はベンチャーでもできるタイミングになった」と語る。一方で、他分野との違いを「宇宙はメカやソフトや通信などいろいろな技術の集合体であり、参入できる企業は限られる」と打ち明ける。

パネルディスカッションに登壇する赤浦氏、鎌田氏、山岸氏(左から) パネルディスカッションに登壇する赤浦氏、鎌田氏、山岸氏(左から)

志をあきらめない力と、現実に応じた軌道修正のバランスが大切

 グリーの共同創業者として著名な山岸氏は、現在投資家として多数のベンチャーを支援しており、「投資領域を見定める際にはいわゆる半導体のムーアの法則やコンピュータのチープレボリューションのインパクトがある分野を重視している」と説明する。宇宙分野ではアストロスケールに出資しており、「宇宙ビジネスも電子部品の値段が下がったり、高度なシミュレーションが容易にできるようになったり、低価格でいろいろなことができるようになってきた。今投資をしないと5〜10年後の果実は獲れない」と力を込める。

 自ら起業家・経営者としての経験がある同氏は、宇宙ベンチャーの経営に関して「宇宙ビジネス大枠としてはチャンスだが、利益が出るまで時間がかかる。従ってP/LやB/Sをマネージしつつ成長できるかというビジネスセンスは非常に重要。アストロスケールの岡田さんにお会いして、パッションやアントレプレナーシップだけでなくて、ビジネスマンとしてのセンスを感じた」と振り返る。

 「長期の志をあきらめない部分と、現実に応じて軌道修正をしていくバランスが重要。大切なのはマイルストーンを定めてPDCAを回していくこと」とも語る。

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