気鋭の経済評論家が50年前の経営危機を分析した結果と、不正を追及する現代の第三者委員会の報告書で、ともに「名門意識からくるおごり」という言葉が浮かび上がったというのは非常に興味深い。
「おごれる者久しからず」って言葉もあるくらいだし、そんなもんいつの時代も変わらない真理だからだろという見方もできるが、個人的には別の可能性もあると思っている。
それはこの50年間、日本型組織の本質がなにも変わっておらず、時代や経営環境の変化についていけないのではないかということだ。
「名門意識」というのは、過去を否定できないということでもある。ということは、先人たちが続けてきた不正や悪習を断ち切ることができないのはもちろん、既得権益に手を突っ込むことができないというのは容易に想像できる。
「おごり」のある者というのは、厳しい現実から目をそらす。「誰かがどうにかしてくれるだろう」と問題の先送りをする。本人たちからすれば「仲間内じゃあみんなやっているよ」というくらいのちょっとした取り繕いだが、外からは「偽装」や「粉飾」と映る。
「三井」というブランドが実はハリボテだったことが明らかになったなかで、東芝、化血研、という日本の戦後を支えてきた名門の不正が次々と露見している。これはたまたま偶然に重なっただけなのか。あるいは、「日本型組織の終わり」が始まっているのか。
前者であることを心から祈りたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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