中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)

» 2016年01月07日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

世界を読み解くニュース・サロン:

 今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

 欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。


 今香港で大きな騒ぎになっているニュースがある。2015年10月ごろから香港の小さな書店の関係者5人が次々と行方不明になっているのだ。この書店は、中国共産党や習近平国家主席などに批判的な書物を取り扱っていることで知られ、行方不明の5人は中国本土の当局に拘束されていると見られている。

 中国共産党がこの手の強硬な検閲活動を行っているのは周知の事実だ。人権派の弁護士や民主活動家は拘束されるし、公安当局による監視も行き届いている。

 そして中国共産党がインターネット上の検閲に力を入れているのも、つとによく知られている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる共産党政治局員から公安部、大学生などの工作員が人海戦術で、反政府的で扇動的なネット上の発言などを対象に検閲を行っている。

 例えば、チベット仏教の最高指導者である「ダライ・ラマ」や、民主化運動の「天安門事件」といった単語は、サイバーポリスによって直ちに削除されてしまう。今では自動的に検閲を可能にするソフトも導入しているようだ。

 冒頭の書店同様、香港には中国共産党に楯突く人たちは少なくない。そしてサイバーポリスの検閲についても、香港には、逆に検閲活動を「監視」している人たちがいる。例えば、香港大学のジャーナリズム・メディア学センターの研究チームだ。

 彼らの調査で、2015年に中国当局がもっとも多く削除したとされる発言(言葉または写真)が明らかになっている。つまり、中国政府がもっとも拡散して欲しくない事柄が判明しているのだ。最近これまで以上にインターネット規制を強化している中国共産党は、2015年にどんな発言に恐れていたのか。

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