そのほか、良くなったポイントをざっと列挙すると、シートのサイズや体との接触の仕方が良くなった。ステアリングがデザイン優先の変形楕円からまともな円形になった。シート、ペダル、ステアリングの相対的位置関係がきちんとした。パワートレイン全体の騒音が軽減された。
さて、全体を見渡してプリウスはどうか? 「ハイブリッドだからしょうがない」という言いわけがほぼいらなくなった。普通になったと言い換えても良い。「立派に更正したな」というのが本音だ。プリウスはある意味かわいそうなクルマだった。何しろ自動車の未来をひとりで背負わされて、ずっと燃費のチャンピオンであり続けなくてはならなかったからだ。名家の長男のように、周囲の期待に応えるために多くのことを犠牲にしてきた。
そのプリウスが変わったのは、トヨタが「クルマとして本当にそれでいいのか?」という原点に立ち返って考え直したからだ。今回のモデルチェンジに当たって、トヨタはそもそものクルマの作り方を変えた。
トヨタはTNGA(Toyota New Global Architecture)という新しいクルマ作りの概念を打ち出して、トヨタの内部で「良いクルマ」とは何かについての再定義を行った。「良いクルマ」のリファレンス(基準)が徹底的に見直された。いくら技術があってもリファレンスが間違っていればいいものはできない。トヨタがすごいと思うのは、燃費のチャンピオンを捨てずに、リファレンスに基づいたクルマに仕立ててきたことだ。筆者は新型プリウスの変化の方向がトヨタの明るい未来につながっていると思う。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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