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» 2016年03月04日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:迷走する長崎新幹線「リレー方式」に利用者のメリットなし (1/5)

「長崎新幹線」こと九州新幹線(西九州ルート)は、フリーゲージトレインの開発が遅れて2022年の開業が難しくなった。そこでJR九州が提示した代案が「リレー方式」。列車を直通せずに途中駅で乗り換えを強いるという。そんな中途半端な新幹線はいらない。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 大都市の通勤路線の途中駅で、各駅停車から快速電車に乗り換える人は多い。私も会社勤めの時はそうだったし、今でも打ち合わせに行く時は乗り換える。時刻表を見れば、到着時間の差は数分だけ。だけど、速達列車への乗り換えはクセになっている。特に朝の数分を貴重だと考える人は多いだろう。

 それでは、新幹線の長距離移動ではどうか。例えば、小田原駅から京都駅へ行く場合。8時08分発の「ひかり503号」に乗ると京都着は10時11分だ。しかし、名古屋駅で後続の「のぞみ101号」に乗り換えると、京都には13分早い9時58分に着く。乗り換えなしで13分遅いか、乗り換えて13分早いか。あなたならどちらを選ぶだろう。よほど忙しい人以外は「乗り換えなしで13分遅い」を選ぶと思う。乗り換えは面倒だ。荷物が多ければなおさらである。座ったままのほうがラクだ。13分くらい遅くてもいい。

 さらに条件を加えて「乗り換えて13分早くなるけれど、特急料金は増える」となったらどうだろう。実はこれ、東海道新幹線の話ではなく、九州新幹線(西九州ルート)の話である。

九州新幹線(西九州ルート)の概略図。いわゆる「長崎新幹線」は通称。現在は整備新幹線を担当する鉄道・運輸機構、長崎県、佐賀県とも「九州新幹線(西九州ルート)」という名称を使用している。佐賀県への配慮と言われている 九州新幹線(西九州ルート)の概略図。いわゆる「長崎新幹線」は通称。現在は整備新幹線を担当する鉄道・運輸機構、長崎県、佐賀県とも「九州新幹線(西九州ルート)」という名称を使用している。佐賀県への配慮と言われている

乗り換えあり、13分短縮、料金値上げ

 2月24日、JR九州は九州新幹線(西九州ルート)について、武雄温泉駅で乗り換える「リレー方式」を提案した。現在、博多〜長崎間は、在来線特急「かもめ」が最速1時間48分で結んでいる。もちろん乗り換えはなし。しかし、新幹線リレー方式案は、博多から武雄温泉まで在来線特急を走らせ、武雄温泉でフル規格新幹線に乗り換えて長崎に至る。朝日新聞の試算によると、乗り換え時間を5分と見込んで、所要時間は約13分の短縮という。

 そこで冒頭のたとえ話になる。直通なら13分遅い。乗り換えれば13分早い。ただし料金は上がる。

 在来線方式から新幹線方式に変わって料金が同じになるわけがない。例外は北陸新幹線の首都圏〜北陸だけだ。短い直行ルートになった上に、第3セクター経由も消えて少し安くなっている。かなり特殊な例である。

現行の所要時間と運賃・料金の比較。リレー方式の新幹線特急料金と合計金額は予想。特急料金は乗り継ぎ割引を適用。フリーゲージトレインは全区間を新幹線特急料金として試算、合計金額は予想。矢印の色は前出のルート概略図の色に合わせた 現行の所要時間と運賃・料金の比較。リレー方式の新幹線特急料金と合計金額は予想。特急料金は乗り継ぎ割引を適用。フリーゲージトレインは全区間を新幹線特急料金として試算、合計金額は予想。矢印の色は前出のルート概略図の色に合わせた

 九州新幹線(西九州ルート)と現在の長崎本線経由の距離はほぼ変わらず。ただし特急料金は現在の1890円では収まらない。フル規格区間の武雄温泉〜長崎間は、九州新幹線鹿児島ルートでほぼ同距離の博多〜新大牟田間と照らし合わせると2250円になる。博多〜武雄温泉間の在来線特急料金は1440円。新幹線と在来線特急の乗り継ぎ割引を使うと、在来線特急は半額の720円になるから、合算で2970円。つまり、乗り換えさせられる上に、試算では1080円の値上げになる。

 そして、冒頭の東海道新幹線と違って、利用者が選択できない。九州新幹線(西九州ルート)が開業すれば、博多〜長崎間の在来線特急は廃止される。政府与党の九州新幹線西九州ルート検討委員会は、3月までに方向性を定める方針だ。だから「こんな中途半端な方式で開業しないでくれ」と声を上げるなら今のうちだ。

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