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» 2016年03月25日 11時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」勝利の方程式 (1/5)

北海道新幹線の開業と当時に、道南いさりび鉄道も開業する。並行在来線の江差線を継承する第3セクターだ。5月から運行を開始する観光列車「ながまれ海峡号」の予約も盛況という。この列車の仕掛け人に誕生の経緯を聞いた。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


特別に予算計上、2両を観光列車兼用へ改造

 3月26日に開業する道南いさりび鉄道は、JR北海道の江差線を継承する第3セクターだ。地域の鉄道交通を維持するために設立された。沿線人口は少なく赤字が前提。10年後には利用者数が10%も減り、約23億円の赤字という試算。開業にあたって大規模な投資をしにくい。車両はJRが使っている古いディーゼルカーをそのまま使い、塗装の変更さえしない。

 新会社を盛り立てるために、地域ぐるみの盛り上げが必要だ。いすみ鉄道やひたちなか海浜鉄道のような「応援団」を立ち上げたい。そしてもう1つ、沿線地域の情報を発信して観光集客に結び付けたい。観光車両を導入できないか。アイデアはいくつもある。しかし、最小限の人件費で発足する会社には実行部隊を持つ余裕がない。そこで日本旅行が相談を受けた。2015年7月だった。

 応援団については、沿線の自治体に呼び掛け、2015年11月15日に地域ぐるみの利用促進協議会「道南いさりび鉄道地域応援隊」が結成された。さらに、アドバイザーとして日本旅行北海道の新規事業室長、永山茂氏を招聘した。永山氏は当連載の第1回でも紹介した(関連記事)。鉄道趣味を仕事や社会貢献に活用する人物である。

 観光車両は、JR北海道から譲り受けた9両のディーゼルカーのうち、2両を観光車両とした。平常時は通勤通学用に使い、イベント時にも使える特別な車両だ。地域情報を発信する列車として、外装を目立たせる。車内には地域の観光情報になるアイテムを設置し、飾りを付ける。

 そこで永山氏が、応援隊の取り組みの中で「観光車両を使った観光列車」を提案。週末や休日に、地域の素材を使った食事を提供して、観光客に楽しんでいただくためのツアーを常設する。ヒントは、全国で導入が進んでいる食事付き観光列車だ。道南いさりび鉄道側も賛同した。そのために、北海道は特別に3500万円の費用を計上した。観光需要に望みを託す。一点豪華主義である。

 こうして、地域情報発信車両「ながまれ号」の導入が決まった。濃いブルーを基調としたラッピングを施し、客室はテーブルを設置できるように改造した。ながまれは「ごゆっくりおくつろぎください」という意味だ。

道南いさりび鉄道が導入する観光車両「ながまれ号」。開業日から普通列車で運行を開始する 道南いさりび鉄道が導入する観光車両「ながまれ号」。開業日から普通列車で運行を開始する
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