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» 2016年04月04日 08時00分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:新型プリウスPHV 伸びたEV走行距離と後退した思想 (1/5)

米国・ニューヨークで開催された国際オートショーで、トヨタ自動車の新型プリウスPHVが発表された。旧来モデルと比べてバッテリーのみでの走行距離を大幅に伸ばしたが、それと引き換えに失ったものは大きい。

[池田直渡,ITmedia]

 3月23日、「ニューヨーク国際オートショー」で、新型プリウスPHVが発表された。大方の予想通りEV走行距離、つまりバッテリーのみでの走行距離は、旧型の26.4キロメートルから60キロメートル以上へと大幅に伸ばしてきた。価格はまだ発表になっていないが、旧モデルの価格差は通常のハイブリッドモデルに対して50万円高だったので、恐らく新型でも300万円を切るあたりに落ち着くと思われる。

 先代モデルは商業的に成功したとは言えなかった。今回はそこを何とかしなくてはならないのがトヨタの課題だ。

ヘッドランプのイメージは通常モデルと大きく違う。角形の8灯を埋め込んで精悍なイメージになった ヘッドランプのイメージは通常モデルと大きく違う。角形の8灯を埋め込んで精悍なイメージになった

 そもそもプリウスPHVとは何なのかというところから話を始めたい。PHVとはプラグインハイブリッドのことで、外部電力、要するにコンセントから走行用バッテリーに充電することができる。非プラグインハイブリッドとの最大の違いはこの事前充電のあるなしで、仮に充電をいっさい行わないとすれば、PHVの存在意義がない。重量増加分だけむしろ燃費が悪化する。

 つまり、充電池優先で走行して、電力が足りなくなったらエンジンを使うという概念がPHVだ。だからPHVは航続距離延長装置(レンジエクステンダー)付きの電気自動車だと解釈していい。「ハイブリッドに充電できるようになった」という認識では、その設計意図が理解できない。

 さて、電気を優先するからには、走行距離当たりのエネルギーコストが、電気の方が優位になければ意味がない。そこはどうなのか。旧型プリウスのプラグイン充電池の容量は3kWhなので、1000Wの家電、例えばドライヤーを3時間使った程度の電力ということになる。バッテリーが空の状態から、深夜電力料金で満充電にする場合のコストは約35円(契約種別や時期、電力会社によって変動する)。つまり1キロあたりの走行コストは約1.3円である。

 比較対象となる非プラグインハイブリッドのプリウスの国交省届け出燃費はガソリン1リッターあたり30.4〜32.6キロ。最高値の32.6キロ/Lをベースにガソリン価格を110円/1Lで計算してみると、1キロあたりのコストは約3.3円だ。

 あくまでも発表値なので、実際にはそんな距離は走らない。筆者の経験では都内でそこそこ低燃費を心掛けた場合、プリウスはだいたいリッター20キロくらいなので、1キロあたりコストは5.5円ほどである。もちろんプラグインの方も冷暖房などの使い方によって走行距離が変化するので1.3円というコストは絶対ではない。フェアに見るために仮に走行距離が半分になったとしても、そのコストは約2.6円。仮に毎日10キロの通勤に使うなら、双方理想的な状態で13円:33円、現実的な状況で26円:55円と倍を超える差がつくことになる。

 余談だが、このバッテリ容量を超えるとPHVの優位性は徐々に薄れていくので、毎日の走行距離がバッテリー走行距離に収まった方が有利になるのだが、反面、その単価を積み上げても車両価格の差額を吸収するのは難しいというジレンマは存在する。

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