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» 2016年04月22日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:大規模災害を教訓に、貨物鉄道網の再整備を (1/4)

赤字であっても鉄道が必要という自治体は多い。なぜなら道路だけでは緊急輸送に対応できないからだ。鉄道と道路で輸送路を二重化し、片方が不通になっても移動手段を確保したい。しかし全国の鉄道貨物輸送は短縮されたままになっている。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


復旧へ動き出した鉄道

 熊本地震によって、救援物資輸送面の大きな課題が露見した。熊本県の基幹交通路が分断された。鉄道は鹿児島本線、九州新幹線鹿児島ルートが不通となった。道路は九州自動車道が不通となった。どちらも長期化の見通しだ。福岡から熊本を経由して鹿児島に至る国道3号は、熊本電鉄と立体交差する松崎跨線橋で段差が発生して不通となり、迂回路を含め渋滞しているという。

JR貨物は4月19日から吹田貨物ターミナル発福岡貨物ターミナル行きの臨時支援物資輸送列車を運行開始。全国から被災自治体向けの無料輸送も始めた JR貨物は4月19日から吹田貨物ターミナル発福岡貨物ターミナル行きの臨時支援物資輸送列車を運行開始。全国から被災自治体向けの無料輸送も始めた

 熊本空港は幸いにも滑走路に被害がなかった。ターミナルビルの一部が損傷したとはいえ、19日から航空便が再開している。現在、日本各地からの支援物資は海路と空路が中心だ。各地から海上自衛隊の艦船が急行し、ヘリコプターを使った救援物資輸送が続く。それでも物資到着に偏差があるようで、SNSなどで助けを求める声が行き交っている。

 そんな中、JR貨物が19日から臨時の救援物資輸送列車を走らせている。大阪の吹田貨物ターミナルを22時37分に出発し、福岡貨物ターミナルに翌日12時36分に到着する。コンテナ貨車10両編成、真四角な12ftコンテナ50個、250トンの輸送力がある。この列車は、前日に東京貨物ターミナルを23時33分に出発する定期貨物列車と連携する。さらにJR貨物は被災自治体向けの救援物資の無料輸送開始も発表した。

 鉄道が機能することで、多くの人々が救われる。九州行きの貨物列車は福岡までとなっているけれど、JR貨物は「復旧状況によって被災地最寄りコンテナ駅は変わる」と発表している。JR九州が線路を整えてくれたら、もっと熊本の近くまで運べるという意思表明だ。JR貨物は東日本大震災でも、神奈川県根岸のオイルターミナルから東北へ向けて、臨時の石油輸送列車を走らせた。自ら被災したにもかかわらず。あのとき、どれほど多くの人々が鉄道貨物列車に希望を見いだしたことか。

臨時貨物列車は5トン積みコンテナ50個、250トンを輸送可能(写真はイメージ、出典:flickr) 臨時貨物列車は5トン積みコンテナ50個、250トンを輸送可能(写真はイメージ、出典:flickr
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