もう1つ、運転席と後席の腰の高さ、頭の高さに注目してほしい。後席に閉塞感を感じさせないためには映画館のシートのように、前席より後席の座面高さを持ち上げなくてはならない。だから頭上がよりツラくなる。パッソ/ブーンに実際に着座してみると、写真で見る以上にしっかりと差をつけてあり、快適である。膝元の広さもサイズを考えると立派なもので、ヴィッツがかわいそうになるくらいである。
また、リヤドアの後ろ上方角部分のオープニングラインを頑張って広げてある。乳児を抱いたお母さんが頭をぶつけずに乗り込めることを目標にしたとダイハツは言う。よくできている。
ほかのクルマもそうしないのかと言う疑問は当然あるだろう。ルーフを水平なまま後ろまで引っ張ると空力で不利になり、燃費に悪影響が出る。そしてドアのオープニングを大きくするとボディ剛性が落ちる。ダイハツの見識というのは、ここでリヤシートの居住性にはっきりと優先したことだ。設計とは相反するさまざまな要素の折り合いポイントを見つける作業だ。そこに揺らがない方針がないと、全部を均等に盛り込んでおかしくなる。
想定ユーザーはクルマ好きではない。ダイハツははっきりと「運転が得意でない人のためのデザイン」と言う。それはどういうことか、まずは運転席から見えるボンネット面の水平面を増やしている。サイドウインドーの下端のラインも水平にしてある。すべて車両感覚をつかみやすくするためだ。狭い場所での取り回しや、駐車時のクルマの向きの把握しやすさを優先したのだ。
これらも空力的不利を承知でリソースを優先的に振り向けたのだ。命にかかわる速度ではないにしても、ぶつけたりこすったりすれば修理にお金がかかる。それで運転が嫌になってしまわないということはクルマの大事な性能だ。アジアの小型車はどうあるべきかという見識がダイハツにはあるのだ。
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