郊外に住む中高生にダイレクトに届けるために活用したのは”スマホ広告”だ。
「中高生はスマートフォンを絶対に持っていると思った。だから、Webの広告の中で、スマホに特化して予算を投入した」
象徴的なのは、作品のWebサイトの閲覧方法。通常のアニメ作品ならスマホとPCの利用比率が半々程度になるが、本作はスマホでの閲覧が95%以上だった。
「95%以上というのは飛びぬけた数字。これを見て、PCでの広告展開にはあまり意味がない、スマホに全力注力だ――とより指針が固まった」
スマホ広告は、ターゲティングを強く意識した。大人が本作の存在を知らないのも当然で、「大人はほとんど『ずっ好き』の広告を見ていないはず。最高でも24歳までしか表示されないようにした」と語る。
「特に、YouTubeの動画広告が非常に効果的だった。基本的に動画広告は途中でスキップされてしまうもの。でもYouTubeにHoneyWorksのファン層が存在していたこともあって、動画広告を最後まで見た人が50%を超えるというのが何件もあった」
地域性も広告戦略に活用した。都心での広告は大きく展開していないが、地方のキー局系列にはテレビCMを出している。また、都内では池袋を起点に郊外へとターゲット層が広がっていたので、池袋と西武線には積極的に展開した。地域性を分析したことで、費用対効果の高い広報活動が可能となったのだ。
中高生はそもそも大人のファンと比べて使えるお金が少ない。そんな彼らのために気を付けたことはなんだろうか。
「料金はやはり下げた。映画自体はもともと中高生料金で低いが、劇場前売券は特典付きでも1100円を上限とした。少ないお小遣いの中で、まずは1回見に来てもらうことを目指した」
コアファン層に向けての施策としては、8週連続で来場者特典を変更し“何度も見に来てもらう”ことを狙った。これは多くの劇場アニメで活用されている手法だ。
しかし、実感としては「コアユーザーは来てくれたが、やはり金額的に8回来てもらうのは難しかった。大人の1000円と、中高生の1000円は重さが全然違う」。多くの劇場アニメが“同じ映画を何度も見に来る層”に支えられている一方で、『ずっ好き』は”1回見に来る層”に支えられているのだという。
「驚いたのは、1人で映画を見に行く層がほとんどいないこと。友人と行く、彼氏と行く……思っていた以上に、複数人で行く層が大多数だった。“2人で行くとお得”というキャンペーンなども次回作のときには効果的かもしれない。デートムービーとしても受け入れられていたし、HoneyWorks好きが”布教する”といった見方もあったようだ」
そうしたファンの布教も、“1回見に来る層”の多さの要因かもしれない。
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