マツダ・アクセラはマイナーチェンジじゃない池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2016年09月05日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 少し前まで、クルマは4年ごとにフルモデルチェンジを行い、その間の2年経過時にマイナーチェンジを行うのがお約束だった。最近ではモデルチェンジのサイクルは長くなりつつあり、少しずつ事情が変わりつつある。

 4年に1度のモデルチェンジという慣習ができたのは、1970年代で、恐らく技術進歩のペースとクルマの旧態化の関係がそのくらいでちょうど良かったのだろう。

大幅改良とうたわれるマツダのアクセラ 大幅改良とうたわれるマツダのアクセラ

 その慣習はやがてビジネスとして固定されていく。世の中の人は「同じお金を使うならより新しいものを」と思う。300万円のクルマが目の前に2台あったとしたら「2年前にデビューしたA社のクルマより、出たばかりのB社のクルマ」がお得に見える。新しいものが圧倒的に良いという常識があればそういう判断になる。

新車効果時代の終焉

 ことはクルマに限らないが、新製品はそういう勢いに乗って売れる。クルマの場合、これをことさらに「新車効果」と名付けて、定期的に新車効果のテコ入れを行うことが当たり前になった。これがマイナーチェンジである。

 それがだんだん慣習化していくと、マイナーチェンジは新車効果を期待するメーカーの都合の色が濃くなっていく。新車効果を高めるためには、できるだけ変わったように見せるデザイン変更や、「ここが変わった」と話題にしやすい新機構が必要である。下手をすると、そういうマイナーチェンジの目玉は、新車のときから後出し用にキープしてあったりするのだ。

 そういうマイナーチェンジモデルに試乗してみると、「あれ?」と思うこともある。分かる人同士の間では「あれはマイナー前のヤツの方がお勧めだ」というケースもあるのだ。と書くと、メディアはそういうことを書かずに隠しているとか、ありがちな陰謀論をふっかけられるかもしれないが、そういうことではない。

 一例としてマツダのケースを挙げておく。前回のアテンザのマイナーチェンジのとき、マツダはダンパーの初期動作を柔らかくして、シートも面圧の分散を図った。それはエンジニアが上質な乗り心地を目指してやったことだ。少なくともメーカーには意図した狙いがあって、意図通りの製品になっていた。だが、それが万人に良いかどうかは別の問題だ。

 もちろん「良くなった」と評価する人もいる。しかし、当時原稿にも書いたのだが、確かに乗り心地は改善しているが、その分タイヤ踏面で何が起きているかを感じるインフォメーションは伝わりにくくなっていたのだ。これは要素のトレードオフである。筆者の身の回りには乗り心地よりも情報量の豊かさを求める人が多い。だから「お前が買うならマイナー前のヤツ」という話になるのだ。

 長い余談だったが、要するに、もう一律に新しいものが古いものより良い時代ではない。何を重視するかによっては得たものより失ったものの方が大きい場合もあるし、ひどい場合は角を矯めて牛を殺すケースもある。そういう時代にマイナーチェンジをどう考えていくかはとても重要だ。

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