日本の鉄道史に残る改軌の偉業 北海道もチャンスかもしれない杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2016年09月23日 06時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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石北本線、根室本線の復旧も改軌したら……

 無理を承知で書くけれども、いま、台風被害で不通になっている石北本線や根室本線を復旧させる際に、新幹線と同じ1435ミリメートルにできたらどんなにいいだろう。

 石北本線を改軌すれば、北海道新幹線の旭川延伸と接続できる。秋田新幹線のような新在直通新幹線方式で、札幌や新函館北斗から網走へ直通できる。いや、新函館北斗〜函館も1435ミリメートルの単線を追加すれば、函館とも結べそうだ。さすがに東京駅まで乗り入れようなどとは言わない。だから改軌工事に当たって電化する必要はない。ディーゼル・ハイブリッドタイプの道内専用車両を投入したい。根室本線、石勝線も同様に非電化で改軌する。函館、札幌から帯広、釧路、根室へミニ新幹線を走らせる。

現在のJR北海道の路線略図、赤線は災害不通区間(9月20日現在) 現在のJR北海道の路線略図、赤線は災害不通区間(9月20日現在)
北海道新幹線旭川延伸と主要路線の改軌イメージ 北海道新幹線旭川延伸と主要路線の改軌イメージ

 貨物列車はどうするか。青函トンネルは貨物列車との併用でスピードを制限された。そして、石北本線、根室本線とも、喫緊の課題は旅客列車ではなく貨物輸送だ。石北本線の玉ねぎ列車は10月上旬まで運休の見込み。荷物の玉ねぎも台風被害で水没したけれど、このまま出荷できなければ、被害を免れた玉ねぎも腐ってしまう。根室本線も同様だ。トラック輸送で補っているとはいえ、帯広貨物ターミナルから札幌への輸送力は半減している。運休が長期化するようなら、十勝港からの船便も検討中という。

 運ばない荷物は腐る。市場は待ってはくれない。東京・大田市場では玉ねぎの高騰と品不足に困惑しており、輸入を検討する動きもあると報じられた。急いで出荷するためにトラック輸送と船便が定着したら、もう荷主は鉄道貨物には戻ってこないかもしれない。国鉄時代、1975年の8日間に渡るスト権ストで、貨物列車の顧客はトラック輸送に移ってしまった。あの悪夢が蘇りそうだ。

 石北本線と根室本線を改軌した場合は、貨物列車も新幹線規格に変更する。懸案の貨物新幹線の誕生だ。こちらは道内にとどめない。東北新幹線に乗り入れて、仙台、大宮付近に積み替えステーションを作り、在来線貨物列車やトラックに積み替える。生鮮食品輸送のスピードアップだ。鮮魚だって輸送可能になる(関連記事)。

 このところ寂しい話題が続いたので、今回は夢物語を綴ってみた。しかし、近鉄名古屋線や京成電鉄の改軌、山形・秋田新幹線も、当時は無理な夢物語だったはず。その夢を叶えてくれたあのころにあって、現在にないもの。それは、鉄道を生かすという展望を持ったリーダーである。夢は夢として捨て置いていい。しかしリーダーシップは必要だ。近年の鉄道を思う1人として、実に嘆かわしい。

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