コンセプトは「世界初」 イケメン大暴れ『HiGH&LOW』が10代女子の心をツカむ理由(1/4 ページ)

» 2016年09月29日 07時44分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 『HiGH&LOW』というタイトルを知っているだろうか。EXILE TRIBEや三代目J Soul Brothers、劇団EXILEなどが所属するLDHグループが総出演して大暴れする青春作品だ。テレビシリーズ(日本テレビ)2クールを皮切りに、7月には映画『HiGH&LOW THE MOVIE』(松竹系)を公開し、興行収入は20億円を超えた。さらにコミックス展開やCDリリース、ライブまで行うという大規模な“総合エンターテインメントプロジェクト”となっている。

 この記事を読んでいる読者の中には「EXILEは1人も分からない」「どうも自分はターゲットではなさそうだ」と思う人もいるかもしれない。実際、その印象はある意味では正しい。映画を観た76万人の多くは出演者ファンのティーン層だ。

 大人にはピンと来ない、でもティーンの心には確実に届いている――そんな『HiGH&LOW』は、コンテンツとメディアミックスの成功例として学ぶべき点が多い。同シリーズを手がける、日本テレビ植野浩之プロデューサーに聞いた。

ALT LDHグループ総出演の総合エンターテイメントプロジェクト『HiGH&LOW』(C)2016「HiGH&LOW」製作委員会

『HiGH&LOW』というアーティストを作る

――『HiGH&LOW』は、どういった経緯で生まれた企画なんでしょうか。植野プロデューサーは、テレビ版の企画から関わっているんですよね。

ALT 日本テレビ植野浩之プロデューサー

植野: 「テレビ版の企画から」と言うと語弊があるかもしれません。そもそも『HiGH&LOW』は、“テレビ版が好評だったので、映画に進出する”……という企画ではないんです。もともとの始まりは2年くらい前で、「ブランドを作ろう」という話をしていたところにあります。日本テレビはテレビ局ですが、動画配信の「Hulu」を始めとしていろいろなところと連携するようになりました。そういう状況下で、“テレビでコンテンツを放送する”だけではなくて、“1つのコンテンツをさまざまなメディアで活用する”ことが会社の命題となっていた。

 どういうものを作れるかを社内で話し合っていたタイミングで、昔から付き合いが長かったHIROさん(EXILEのリーダー・LDH代表取締役)と食事をしました。日本テレビの命題についてお話ししていたら、HIROさんも「実は僕らも同じことを考えていたんです」という話になった。

――1つのコンテンツを他メディアに展開することを、LDHさんも考えていた。

植野: そうです。“テレビ番組”を作るためにコンテンツを作るのではなくて、コンテンツありきでやっていきたいと。『HiGH&LOW』という1つのコンテンツをどうやって作っていくか模索しながら、企画を考えていきました。

――『HiGH&LOW』というアーティストの出演先をどこにするか考えていくようなイメージですね。

植野: 企画を考えるときは、初めからコンセプトを考えています。僕は「誰もやったことがない」とか「初めて」という言葉が好き。“テレビと映画に展開”までは、結構普通ですし、僕もやったことがある。でも、そこにコミックが加わって、CDが加わって、SNSをやって、さらにライブまで加わったら、聞いたことがないじゃないですか。……というか、できないですよ。そこにネットとの連携などを含めたら、世界初と言えるんじゃないか――それが『HiGH&LOW』のコンセプトです。

ALT クロスメディア展開する本作。ドラマと映画だけでなく、コミックやCD、ライブにまで展開する

 ビジネス的な視点は、コンセプトの後から考えました。根幹にあるのは「どうしたら世界初と言えるか?」「どうやれば驚きを作れるか?」。だから『HiGH&LOW』は企画が始まったときから“総合エンターテインメントプロジェクト”という言い方をしています。

――プロジェクト全体に対する反応はいかがですか?

植野: 盛り上がっていますね。夏休みの時期には、日本テレビ前のスペースでリアル店舗でフードやグッズを販売する「HiGH&LOW THE BASE」というイベントを行っていましたが、ものすごい売り上げでした。普通は“テレビで宣伝して、映画の興収でもうける”というスキームかもしれませんが、『HiGH&LOW』はそうではない。既存のスキームとは違う当たり方を狙っていましたし、その通りに今動いています。

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