鮮魚流通にとって電子商取引は成立しないか。いや、そうとも限らない。
豊洲市場は「いなせり」という電子市場システムを準備中だ。仲買人と料理人をマッチングするシステムである。東京魚市場卸協同組合に加わる約600社の仲卸業者が翌日に出荷できる商品を登録しておく。飲食店はその中から、午前2時までに希望の魚をWebサイトで発注する。その情報を基に、運送業者が梱包とルート別の仕分けを実施し、即日配送する。このシステムは豊洲市場開設後に運用開始すべく準備中だ。
2011年に、このサービス範囲を拡大した「八面六臂(はちめんろっぴ)」というサービスが始まり、この運営企業は「鮮魚流通のAmazon」として話題になった。築地市場や大田市場などの仕入れと、全国各地の産地市場や生産者からの仕入れを組み合わせ、オンラインで注文、決済し食材を飲食店に届ける。扱い品目は鮮魚だけではなく、築地市場や大田市場などの中央卸売市場経由の仕入れである青果、精肉などもある。
いなせりは市場の協同組合主導だから、市場抜きのビジネスはあり得ない。しかし、同様のシステムで、生産地が直接仲買人を請け負ったらどうなるか。八面六臂は既に生産者からも仕入れている。このような電子市場が大きくなると、豊洲新市場を経由する魚は減っていくかもしれない。こうした流れに、豊洲新市場は対抗するか、あるいは取り込んでいくか。どう舵を切るつもりだろうか。
物流面で見れば、電子市場取引が拡大すると小口の荷物が多くなる。従来の「生産地から市場への大量輸送」は反比例して減っていくだろう。冷蔵貨物列車の築地市場、大型冷蔵トラックの豊洲市場、では、第三の市場「電子市場」はどうなるか。現実に必要な市場はもっとコンパクトで、小口の電子取引を支援する管制塔のような存在になるかもしれない。豊洲市場には対応する設備と覚悟があるだろうか。
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