若手の「U・Iターン」が増加、成功するには移住後の「働き方」に迫る(1/2 ページ)

» 2016年11月28日 07時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 大都会を離れ、地方で働く――「Uターン」や「Iターン」といった言葉を耳にする機会が増えた。窮屈な都会を離れ、生まれ育った故郷へ帰ったり、魅力的な地域へと移住する動きは近年急増。希望者も、従来のリタイア組から働き盛りの家族へとシフトしているという。

地方移住希望者は増加中、「若返り」が顕著に

 地方暮らし希望者を支援するNPO法人・ふるさと回帰支援センター(東京都千代田区)によると、「地方で働きたい」という問い合わせは、2008年のリーマンショックを機に増え始めたという。その後13年にかけて緩やかに増え続け、政府が「地方創生」を掲げた14年を機に急増。地方への移住施策が拡充された15年の問い合わせ件数は2万1584件と、08年の約10倍に上った。

photo 地方移住希望者数の変遷(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター調べ)

 08年までは50〜70代が移住希望者全体の7割を占めており、団塊世代の移住相談が多かった。だがリーマンショックを境に20〜40代が増加。東日本大震災が起きた11年には、30代の移住希望者の増加が特に多かった。「地域のきずなの重要性が再評価された」とみている。

 震災以降も若手の移住希望者が増え続け、2015年には利用者の7割が20〜40代に。「若返り」が顕著となっている。

photo 年齢別の地方移住希望者数の変遷(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター調べ)

 若い世代が移住を考えるきっかけは、就職後10年が経過したタイミングや、子供が小学校に入学するタイミングがほとんどだという。「子供を自然環境の良いところで育てたい」「これまでの経験を生かし、地域に密着した仕事がしたい」という動機が多いそうだ。

 移住の種類別では、ここ3年間でUターン就職の希望者が約15ポイント増加。一方、Iターン就職の希望者は減少している。

photo 種類別の地方移住希望者の変遷(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター調べ)

地方移住後のライフスタイルは?

 移住を希望する地域は「地方都市」が47.5%を占め、「農村」「山村」「漁村」などを大きく上回った。希望するライフスタイルは、「就労」が年々増加し、2015年には約8割に達している。一方、「半農半休」「悠々自適」は減少中だ。

 希望する就労形態の内訳をみると、「企業への就職」が61.4%と最多。次いで「農業」(23.5%)、「自営業(起業)」(22.5%)の順に多かった。

 全体的に一般企業への転職を目指す人が多く、農業への転向や起業、老後の生活を目的に地方への移住を希望する人は少ないようだ。

photo 地方移住後に希望する働き方(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター調べ)

 希望する住環境は「空き家」が約70%を占め、「アパート」「マンション」などの賃貸物件を大きく上回る結果に。古民家を有効活用するニーズが強い傾向がみられた。

photo 地方移住後に住みたい物件(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター調べ)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.