IoTで農作業者の健康管理 熱中症など事故防ぐCTCと富士通が開発

» 2016年12月09日 19時27分 公開
[ITmedia]

 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は12月9日、IoT(モノのインターネット)技術を活用して農作業者の健康状態を管理する新サービスを発表した。農作業者がIoTデバイスを身に着けながら働くことで、動作や身体の状態に関するデータを取得・分析し、危機管理につなげるという。

 昨今、農業従事者の高齢化が進み、熱中症による農作業中の死亡事故が毎年20件程度発生。健康管理の重要性が問われている。このような状況をふまえ、新サービスは、ビニールハウスなど高温多湿な環境下で農作業を行う人の体調管理を目的に開発したといいう。

photo 農業従事者の年齢層(=農林水産省のホームページより)
photo 農業中の熱中症による死亡者数(=農林水産省のホームページより)

 使用するIoTデバイスは、富士通が提供する「バイタルセンシングバンド」と「ロケーションバッジ」の2種類。前者は腕時計のような形状になっており、心拍数、身体負荷、熱ストレスなどの身体データを取得する。温度や湿度も計測が可能だ。後者は、位置情報、移動軌跡などのロケーションデータや作業者の姿勢などの動作データを取得できる。

photo バイタルセンシングバンド
photo ロケーションバッジ

 各デバイスは、Bluetoothで作業者のスマートフォンと連携。取得したデータは、スマートフォン経由でデータセンターへ送られる。データ解析には、富士通のセンサーアルゴリズムを使用する。

photo センサーアルゴリズムの活用法

 データを分析し、農作業者の体調が危険な状況にあることが分かった場合は、現場管理者のスマートフォンにアラートが届く仕組みになっている。

photo IoTソリューションの全体の流れ

 今年8〜9月には、静岡県の農園で実証実験を実施。データをもとに適切な作業配分を算出し、個人ごとに休憩時間や連続勤務日数を調整できるなど、一定の成果を得た。一方、騒音や日光など、さまざまな条件が伴う屋外作業ではアラートが分かりづらいなどの課題が出たという。

 今後は課題の改善に努めるほか、実証実験の対象施設を拡大する。より多くのデータを取得して機械学習を行い、分析の精度を高める考えだ。

 提供開始時期は2017年度中を予定している。

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