“路上グチ聞き師”、ビジネス界にモノ申す会社員の「リアルな悩み」とは(2/3 ページ)

» 2016年12月19日 10時42分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

ビジネスパーソンが抱える仕事の悩みとは

濱口 仕事関係の相談が多いと聞きましたが、ビジネスパーソンの方はどのような悩みを抱えているのでしょうか?

グッチ 若い世代では、「自分は何がしたいんだろうか?」と悩んでいる人が多いです。具体的には、やりたい仕事ではないにもかかわらず、なんとなく就職をした結果、仕事の内容がイメージと違うという人ですね。できれば会社を辞めたいけれど、次にやりたい仕事も特になく、もやもやした日々を送られているようです。

photo グチ聞き活動を行う「グチスポット」の様子。左はアシスタントの「あっちゃん」さん

 他には、現場側と管理側の価値観の差に悩む人が印象的です。1つ例を挙げると、普段は全く関わりがなく、現場のことを知らないはずの管理職の方が、たまに様子を見に来ると必ず若手社員を厳しい口調で叱責するそうです。管理職の方からすると、仕事の進め方が自分の理想と違っているなど、腹が立つ要素があるのかもしれませんが、現場側は最善を尽くしているので叱られる理由が分からない。ですから、一時的に管理職の指示に従ってその場をしのぎ、姿が見えなくなってから本来の仕事のやり方に戻すそうです。

 体育会系のノリが苦手だという若手の方からも相談されますね。ミスしたときに先輩から冗談半分で小突かれる。何度も続くとストレスを感じるが、目上の人に意見するわけにもいかないと。

濱口 先輩との付き合い方は、若手社員にとっては難しい問題ですよね。30代以上の方の悩みはいかがでしょうか。

グッチ 基本的には、長時間労働がつらくて相談に来る方がやはり多くいらっしゃいます。特にみなし残業制の給料形態をとる企業にお勤めの方は、残業することが前提になっていますから、なかなか帰りにくい。

 社員の契約形態がバラバラの企業でも、長時間労働が起きやすい印象です。正社員、契約社員、派遣社員、下請け会社からきている業務委託のメンバーが同じ部署に混在していると、正社員が残業しているから、他の契約形態の社員は帰りづらいというケースが出てきます。

 また、「契約社員は正社員に意見を言えない」「チームで会議をしていても、立場が違う者同士の集まりだから発言しにくい」など、立場の違いはコミュニケーションにもかなり影響しているようです。

photo グチ聞き活動の風景

長時間労働問題の印象は?

濱口 電通で新入社員が過労自殺する事件が起き、問題となっていますが、長時間労働の根本的な要因については、どのようにお考えですか。

グッチ 私は、現代ビジネスのノルマの決め方に問題があると思います。相談者さんから話を聞く限りでは、企業の経営層の方に「会社は利益を追求するところだから、簡単に達成できる目標を立てても意味がない」と考える人が本当に多い。そこで、社員が毎日朝から深夜まで必死で働かないと到底達成できないような数値を設定する。日本企業には、こういうハードルの高い目標設定を美徳とするような風土がありますよね。しかも、達成できないと怒られる。このことに問題があると感じます。

 企業は、社員のスキルや適性を見て、もう少し手の届きやすいような数値を設定すべきではないでしょうか。従業員を擦り切れるほどフル稼働させてまで、利益を得ることが一番大事なことですか? と問いたいです。重要なのは、従業員が高いモチベーションを保ち、高いパフォーマンスを発揮できる環境づくりだと考えます。

濱口 目標の立て方、その通りだと思います。最近は働き方改革の機運も高まっていますし、少しずつ改善されて欲しいですよね。ただ、確か、グッチさんの活動のコンセプトは「アドバイスしない」ことでしたよね。悩みを持つ人にアドバイスをしないのはどういうわけでしょう……?

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