大ヒット「FF15」を完成させた2つのルール田畑端ディレクターインタビュー(3/3 ページ)

» 2016年12月22日 11時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]
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世界同時発売を行った理由

――全世界で500万本を突破したFF15ですが、日本比率と海外比率はどのようなものでしょうか。

田畑: 海外が圧倒的に売れています。そもそも、ゲームハードの台数は海外のほうが多いですから、予想通りではありますね。日本での数字も、日本ゲーム市場の現状においてはかなりいいです。

――「日本先行、のちに海外展開」ではなく、同時発売を行ったのはなぜでしょうか?

田畑: そもそも最初から「世界同時発売したい」と考えて作品を作っていました。海外同時発売だったからこそ、これだけの盛り上がりが生まれたのかもしれない。FF15はオープンワールドのゲームシステムを採用していますが、これは欧米では何年も前から遊ばれているスタイルなんですね。AAAタイトルの多くがオープンワールドです。YouTuberの出現やeSportsの盛り上がりとも密接に関係があって、プレイヤーがプレイの様子をストリーミング配信して、視聴者がそれを楽しんで拡散していく。逆に、1人でプレイするFFは、ストリーミング文化では「誰が遊んでもプレイヤーの個性が出ないじゃないか」と見向きもされない

 FF15が発売されて、日本のプレイヤーの多くがSNSなどにプレイの様子をアップしています。本作は、オープンワールドにあまり親しみのない日本のプレイヤーでも、自分の遊び方や自分だけの体験をみんなに伝えたくなるような作品を目指して作りました。完全オープンワールドのゲームと、これまでのFFのようなゲームとの、ちょうど中間を狙いたかった。FF15が多くのユーザーにとっての「オープンワールドの遊び方入門」になったらいいなと。

多くのプレイヤーが“それぞれのFF15”を楽しんでいる

――現状は、その狙いが成功していると捉えていますか?

田畑: 「ハマっているけど、全然ストーリーが進まない!」「サブクエや釣りばっかりやっている」という声もよく聞きますから(笑)、70%くらいは成功しているかな。ただ、残りの30%は、これまでのRPGの遊び方の意識が強く残っていると感じています。プロモーションやアップデートを通じて、「楽しんでいる人は、こんな楽しみ方をしているよ」ともうちょっとていねいに遊び方を伝えていく必要があるかもしれません。

 日本だとまだまだ「ゲームは買っておしまい」という意識がある。でも、海外のオープンワールドゲーム……例えば「GTA5」や「ウィッチャー3 ワイルドハント」などは、発売後も何度も何度もアップデートがかかって、プレイヤーが満足できるようにずっとアクティブに保たれているんですよ。

 日本はどの家庭にもインターネットがあって、スマホがありますが、ゲーム機をインターネットにつないでいない人たちも2割くらいいる。そうした人たちに、「ゲーム機をネットにつなげるともっと楽しめるよ。発売で終わりではなくて、楽しさがどんどん増していくんですよ」と伝えられたら。ただ、ゲーム機からのお知らせのような形ではなくて、違うコミュニティーやストーリーから発信できたらいいと思っています。

――では、海外に向けてはどうでしょうか?

田畑: これまで海外展開をするにしても、6カ国にしか対応していなかった。今回は12カ国なので、正直ものすごくいっぱいいっぱいでしたが(笑)、より地域を増やしていきたいですね。日本も合わせて、ユーザーの層を厚くするという縦軸と、広い地域に展開していくという横軸、その両方で進めていきたい。もちろん、簡単なことじゃないのは承知していますけど、難しいからこそやってみたい。

 今回FF15を海外同時発売してみて、「FFだから実現できたこと」と「FFだから実現できなかったこと」の感触が分かりました。シリーズだからこそ評価される点と、されない点がある。そういった面でのノウハウが蓄積されたのは、非常に大きかったです。

――最後に、ビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いします。

田畑: プロジェクトには大小ありますが、数年がかりのものになるとゴールを見通すのは難しい。でも、プロジェクトの成功した絵を考えるんです。「全世界に同時発売」「これまでより多くの言語に対応」「ストリーミング配信をみんな楽しくやっている」――この描いたゴールにそぐわないものは「やらない」と決め、ゴールから逆算して今日するべきことを決めていく。それが、リーダーシップの1つの形だと思っています。



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