観光列車の次のブームは廃線かもしれない杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2017年02月10日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

鉄道ファン以外も楽しめる廃線観光施設

「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」はレール上を走る自転車。レジャー施設として成功した事例の1つ(出典:レールマウンテンバイク Gattan Go!!) 「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」はレール上を走る自転車。レジャー施設として成功した事例の1つ(出典:レールマウンテンバイク Gattan Go!!

 廃線歩きは、鉄道趣味の中でもマニアックな部類だろう。しかし、鉄道ファンではなくても、誰もが楽しめる廃線跡もある。

 岐阜県飛騨市の「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」は、旧神岡鉄道の廃線を利用したレジャー施設だ。自転車を2台並べ、廃線のレール上を走行可能とした乗りものだ。鉄道廃線跡は道路のような急勾配がなく、ローカル線の駅間は人里離れた風景だ。そこを自分の足を使って漕いで走る。サイクリングと違ってハンドル操作が要らないため、走行中も景色を楽しめそうだ。

 宮崎県の「高千穂あまてらす鉄道」は、旧高千穂鉄道の線路を利用した遊覧鉄道だ。軽トラックを改造したトロッコ車両で、かつて終着駅だった高千穂駅から高千穂橋りょうまでを30分で往復する。高千穂橋りょうは国鉄時代、東洋一高い鉄橋として知られていた。水面からレールまでの高さが105メートル。レールの間から水面が見えるなどスリルも満点。鉄道営業時代は鉄橋上で停車し景観を見せるサービスもあった。2013年から黒字化し、2016年は年間2万5000人を集客した。

高千穂あまてらす鉄道はエンジン付きのトロッコ車両「スーパーカート」を運行する。いったん廃線となった線路を使っているとはいえ、将来の鉄道路線復活を目標としている(出典:高千穂あまてらす鉄道 Facebookページ) 高千穂あまてらす鉄道はエンジン付きのトロッコ車両「スーパーカート」を運行する。いったん廃線となった線路を使っているとはいえ、将来の鉄道路線復活を目標としている(出典:高千穂あまてらす鉄道 Facebookページ

 秋田県大館市の「大館・小坂鉄道レールバイク」は、小坂製錬が運行していた鉱山鉄道の廃線跡を利用したレジャー施設だ。自転車改造車両や電動けん引車を使ったトロッコ車両がある。往復約2.7キロメートル。所要時間は30〜40分。小坂鉄道の廃線跡は、もう1つ、別の場所で小坂町が運営する「小坂鉄道レールパーク」もある。こちらは実際に使われていた車両が展示されており、ディーゼル機関車の運転体験もできる。また、ブルートレインの客車を使った列車ホテルがある。

 これらの施設は、展望施設、体験型観光施設、乗りものアトラクションのような位置付けだ。鉄道をテーマとした遊園地のような感覚で、鉄道ファンだけではなく、デートコース、ファミリー層の行楽、グループ旅行の目的地になっている。廃線跡を使った観光施設の成功例と言えそうだ。このほかにも、北海道遠軽町の「丸瀬布いこいの森」、長野県上松町の「赤沢自然休養林」、兵庫県養父市の「明延鉱山」などで遊覧鉄道が運行されている。

「大館・小坂鉄道レールバイク」は地域活性化のために作られた映画で登場した「架空の観光資源」を実現させたという異色の出自を持つ(出典:大館・小坂鉄道レールバイク) 「大館・小坂鉄道レールバイク」は地域活性化のために作られた映画で登場した「架空の観光資源」を実現させたという異色の出自を持つ(出典:大館・小坂鉄道レールバイク

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